狂犬


「ご苦労だった、引き続き監視を続けてくれ。」
 ロイの言葉に士官が敬礼して出ていく。ふぅと息を吐くロイに傍らで一緒に報告を聞いていたホークアイが言った。
「やはり長期戦になりましたね。」
 ホークアイがそう言えばロイが苦く笑う。
「相手もそう簡単に尻尾を掴ませてはくれんさ。」
 軍内部に潜り込んだスパイを炙り出すためのミッションが開始されて早一週間が過ぎようとしていた。端から長期戦になるだろうとは思われていたが、それでも実際にその様相を呈してくると、誰の顔にも疲れが滲んでくる。ロイは疲れを吹き払うように緩く首を振るとホークアイに聞いた。
「ジャクリーンはどうしてる?」
「相手の出方待ちです。」
 今回のミッションで考えられる相手の出方は3つ。勿論、ただ相手の出方を待つだけでなくこちらの都合のよい方向に相手を誘導はしているし、おそらくはあと少しで好転すると判っていても苛々する気持ちは抑えられるものではない。
「いい加減待ちくたびれているだろうな。」
「そうですわね。」
 二人はここにはいない男へと思いを馳せる。例えどんな思いに苛まれようと、鉄の意思で確実に与えられた任務をこなすであろう男の姿を思い浮べて、ロイはそっと目を閉じた。

 ロイは夜の街を歩きながらイライラと首を振った。もう一週間もハボックの姿を見ていない。ロイは今、無性にハボックに会いたくて仕方なかった。これまでも出張などがあれば一週間くらい会わないでいることなど何度もあった。とはいえ、そういう時だって決して会いたいと思わないわけではないのだ。ただいつもなら抑えておけるはずの気持ちが、今回はロイの意志に反して必死に封じ込めようとするその努力を嘲笑うように表へと噴き出ていた。こんなミッションの只中、休めるときにはしっかり休まなければならないことなどロイにも判りきっていた。だが、どうにも家に戻る気になれず、ロイは当てもなく通りを歩き続ける。いっそのこと前後不覚になるくらい酔ってやろうかと、そうすればこの胸の乾きも治まるかもしれないとそう考えて、ロイが適当な店を探して視線を廻らせた
 その時。
「?!」
 突然伸びてきた手がロイの口元を覆う。背後から抱え込まれるようにして路地に引き摺り込まれた。抵抗しようにも強い腕に身動きの1つも出来ぬままロイはゴミ箱の散乱する路地裏の壁に押さえつけられる。気配などなかった。いくら苛立ちに苛まれていようと、自分に害意を持つ相手の存在に気づかぬ筈はないのに。そう考える間にも、ギリと腕を捻りあげられて激痛にロイは大きな手のひらで覆われた唇の間から呻き声を洩らした。後ろからロイの脚の間に割って入ってきた男の脚がグッとロイの股間を押し上げる。男がどんな意図を持っているのかに気がついたロイが相手の腕を必死に振りほどこうとした時。
「アンタ、護衛も付けずに何こんなところを一人でフラフラしてるんスか。」
 ずっと聞きたかった声が耳元で響いて、ロイは驚いて背後を振り返った。冷たい輝きを放つ硬質のガラスのような空色の瞳が自分を食い入るように見つめているのと目が合って、ロイは驚きのあまり一瞬息を飲む。そして次の瞬間叫ぶように相手の名を口にしていた。
「ハボックっ?!どうしてお前がここに?」
「その言葉そのまま返したいっスけどね。」
 不愉快そうにハボっクはそう言うとロイを押さえつけていた手を少し緩める。
「休憩時間なんスよ、流石に長いっスからね。気分転換に出てきたらアンタがふらふらしてるのが見えたから。」
 ハボックはそう言うとロイを見る視線をきつくした。
「で、アンタはここで何してるんスか?今がミッションの真っ只中だってこと、判ってんでしょ?」
 本来なら司令部に詰めていてもいいはずのロイを、おそらくはホークアイが気遣って一晩だけでもと家に帰してくれたに違いないのだ。それを家にも帰らずこんな所をフラフラしているロイに、ハボックは苛立ちを覚えていた。
「私はただ…っ」
「ただ、なんスか?」
 目の前の男に会いたくて会いたくて、どうにも波立つ気持ちを抑えられずに夜の街をうろついていたのだと、そんなことは流石に口に出来ずにロイは唇を噛む。俯くロイを見下ろしていたハボックはロイの顎を掴むと上向かせた。
「人肌が恋しくなったんスか?もう1週間もシテないっスもんね。誰でもいいから抱いて欲しくて相手探してたんスか?」
 嘲るような、詰るようなハボックの言葉にムッとしてロイはハボックを睨む。自分が欲しいのはたった一人だとそう言うか言うまいか逡巡するうち、ハボックが不愉快そうに言葉を吐き捨てた。
「やっぱアンタって淫乱なんスね。オレが任務で側にいらんないの判っててこんなとこうろついて。」
「ハボック、私はっ!!」
「お望みどおり抱いてあげますよ。」
 その言葉と同時に噛み付くように口付けられてロイは腕を突っ張った。だが、その手を簡単に捻り上げられてロイは苦痛に顔を歪める。
「抵抗すんなよ。」
 欲しいくせに、そう言われてロイはカッとして膝を蹴り上げた。だがたいしてダメージを与えることも出来ず、逆に思い切り頬を張られて目の前が暗くなる。ハボックの手がロイのシャツの前立てにかかり左右へと引き裂いた。ボタンが弾け飛び、ロイの白い素肌が曝される。ハボックの手が抱き寄せるようにロイを引き寄せると、その色の薄い唇がロイの胸へと押し当てられた。カリッと音を立てるほどきつく乳首を噛まれて、ロイは喉を仰け反らせて悲鳴を上げる。
「いたっ!あっ…やめっ…!」
 ギリと食い込む歯に食いちぎられる恐怖が膨れ上がり、ロイは目を見開いた。もう片方を指先でこね回されロイは痛みと快感で体が震えるのを止められない。その時、ハボックの膝がロイの股間をグッと押し上げてロイは自身が熱をもって立ち上がっている事に気づかされた。
「相変わらず痛いの好きなんスね。」
「ちが…っ」
「違わないデショ、こんなにおっ勃てて。」
 ハボックはそう言うとぐいぐいとロイの中心を押し上げる。それと同時に血の滲む乳首を舌先で舐った。
「い…あっ…あふ…」
 びくびくと震えるロイにハボックは薄く笑うとベルトに手をかける。シュルリと引き抜くとロイの手首を束ねて縛り上げた。そうしてロイのズボンを下着ごと擦り下げれば抑えるもののなくなった熱がゆるりと立ち上がる。
「もうこんなにして…。」
 くすくすと笑う声にロイは羞恥に頬を染めた。だが、早く弄ってほしくて無意識に腰を揺らしてしまう。ハボックはそんなロイににんまりと笑うとその耳元に囁いた。
「なに?弄ってほしいんスか?」
 ぞくりと身を震わせて、ロイは答えられずに瞳を伏せる。ハボックは目を細めてロイを見つめていたが、意地悪く言った。
「なんだ、弄ってほしいわけじゃないんスね。そりゃ失礼しました。」
 ハボックはそう言うとロイから体を離してしまう。ハッとして見上げてくる濡れた黒い瞳にハボックは微かに唇の端を持ち上げた。
「あ…ハボックっ」
「なんスか?」
 なんでもないようにそう返せばロイの唇が震える。ロイはごくりと唾を飲み込むと震える声でハボックに強請った。
「触って…お願い…っ」
 ロイがそう呟けば立ち上がった中心からとろりと蜜が零れる。縋るような瞳にハボックは薄く笑うと言った。
「触って欲しいんスか?オレに触ってもらってどうしたいわけ?」
 意地悪な言葉にもロイはぴくりと体を震わせる。僅かに瞳を伏せてロイは囁いた。
「ハボの手でイきたい…っ」
 ロイはそう言うと自身を差し出すように腰を振る。とろりと蜜を零しながら揺れる中心にハボックはにんまりと笑った。
「仕方ないっスね。」
 そう言って絡んでくる大きな手にロイは満足そうなため息をつく。徐々にスピードを上げながら扱いてやればロイの唇から荒い息が零れた。
「んっ…あっ…ああん…っ」
 ハボックの手の動きに合わせてロイの腰が揺れる。だらしなく開いた唇から銀色の糸を引いて涎が零れた。
「あっ…ああっ…イくゥ…っ」
 ハボックの手の中でぐぅと嵩を増したロイがどくんと熱を吐き出す。崩れ落ちそうになる体をハボックに支えられてロイはハボックの胸に顔を埋めるとハアハアと荒い息を零した。
「ああ、汚れちゃったじゃないっスか、オレの手。」
 呆れたようなハボックの言葉にぴくりと震えるロイの口元に、ハボックは熱に濡れた手を差し出す。
「綺麗にしてくださいよ。」
 己の吐き出したものを突きつけられてロイはハボックを見上げる。氷のような瞳が自分を見下ろしている事に気づいて、ロイはおずおずと舌を差し出すとハボックの手を舐めた。鼻につく青臭い匂いに涙が滲んでくる。だがだからと言って逆らうことも出来ずにロイは必死にハボックの手を清めた。やっとのことで舐め取ったロイにハボックの声が聞こえてくる。
「自分の吐き出したものをそんな美味そうに舐めるなんて、アンタ相当淫乱っスね。」
 自分から望んでそうしたわけではないのに詰る言葉を突きつけられてロイの瞳に涙が浮んだ。それでもその先を期待するロイは言い返すことも出来ずに甘んじてその言葉を受け止める。だが、そんなロイからハボックは手を離すとさらりと言ってのけた。
「お望みどおりオレの手でイかせてあげたんだから、もう満足でしょう?」
 そろそろ任務に戻るかな、などと言うハボックにロイは慌てて縋りつく。
「待って!やだ…そんな…だってまだ…っ」
「まだ、なんスか?ちゃんとイかせてあげたでしょう?」
 冷たいハボックの言葉にロイは必死に訴えた。
「だってまだ…まだハボの…っ」
「オレの、なに?」
 いたって冷静なハボックの言葉にロイは物欲しげにハボックの股間を見つめる。そうしてハボックを見上げると言った。
「ハボの挿れてっ…挿れてぐちゃぐちゃにして欲しい…っ」
 あられもなく強請るロイにハボックは眉を跳ね上げる。それから冷たくロイを見下ろすと答えた。
「でもオレ、別にアンタに突っ込みたくないし。ミッション中に無駄な体力使いたくないっスから。」
「そ、んなっ」
 冷たいハボックの言葉にロイは顔を歪ませる。
「やだ…っ、そんなこと言わないで…っ」
 体の奥底に渦巻く熱がハボックのことを求めている。もしこのまま何もされずに投げ出されたらきっと狂ってしまうに違いないとロイはハボックに縋りついた。
「お願い…お願いだから…シテ…ねぇ、ハボぉ…っ」
 情欲に黒い瞳を揺らしてロイはハボックに腰を押し付ける。なりふり構わず強請るロイにハボックがくくっと笑った。
「じゃあ、アンタに挿れられるようにしてくれます?」
 ハボックは近くに積み上げてある木箱に腰を引っ掛ける。そうして楽しそうにロイの顔を見た。ロイは震える唇から短い息を何度か吐き出す。それでもハボックの前に跪くとベルトに縛られた不自由な手でハボックのベルトを緩めた。ジッパーを下ろし中からハボックのものを取り出す。うっとりとしたため息を零すとロイはハボックのそれに舌を這わせた。ゆっくりと舌を絡めながら横笛を吹くように唇を押し付ける。先端をチュウと吸うとじゅぶりと咥えこんだ。
「ん…んふ…ぅう…。」
 蕩けた表情でハボックのイチモツをしゃぶるロイをハボックは満足そうに見つめる。ロイの髪を掴むとグイと自身を押し込んだ。
「しっかり喉奥まで咥えてくださいよ。」
「ぅんんっ」
 滾った牡を深く押し込まれてロイは苦しげに眉を寄せる。だが、それでも必死に喉でハボックを締め付けた。ハボックはそんなロイの髪を掴んだまま乱暴に突き入れる。ロイは嘔吐きそうになるのを必死に堪えてハボックの望むままに喉奥にハボックを迎え入れる。ググッと嵩を増したそれが熱を吐き出しロイの喉に叩きつけられた。懸命にそれを飲み下すロイの唇から、まだ熱を迸らせているそれが引き抜かれ、ロイは綺麗な顔を白濁に濡らす。
「あっ…あああっっ」
 顔を濡らすねっとりとした液体にロイは感じ入った声を上げた。ビクビクッと体を震わせ、ロイは縛られた両手を股間に押し付ける。ハアハアと荒い息を零しながら恍惚とした表情を浮かべるロイにハボックは吐き捨てるように言った。
「オレの出したもん飲んで、顔にぶちまけられた挙句イっちまったんスか?」
 サイテーと詰る声にもロイはびくんと体を震わせる。白濁に汚れた顔をあお向けて欲に濡れた瞳を向けた。
「ハボ…っねぇっ」
「なに、まだ満足してないんスか?」
「だって…っ」
 ハボックのもので貫かれたい。ロイはハボックの股間に顔を寄せるとゆるりと立ち上がっているそこに唇を寄せた。
「んっ…んっ」
 必死にむしゃぶりつくロイをハボックは冷たく見下ろしていたが、高々とそそり立って揺れているロイ自身に気がつくと靴先でぐいと押し上げる。
「んあっっ」
 突然の刺激に思わず歯を立てそうになって、ロイは必死に口を開いた。もし傷つけるようなことをしてしまったら容赦なくこの場で放り出されるだろう。その恐怖にロイはハボックに必死に奉仕する。靴先でぐりぐりと嬲られ快感と苦痛に苛まれながらハボックをしゃぶるロイをハボックは満足げに見下ろしていた。
「も、いいっスよ。」
 そう言われてロイはハボックから唇を離す。物欲しげに見つめてくる黒い瞳にハボックは言った。
「むこう向いて、解してるとこ見せて。」
 ロイはハボックの言葉に目を見開いたが、唇を噛み締めると大人しくハボックに背を向ける。片方の指を口の中に差し入れぴちゃぴちゃとしゃぶると唾液をたっぷりと塗す。ハボックに向けて尻を突き出すように上体を倒すと股間から手を回しひくつく蕾を割り開いた。唾液を塗した指を割り開いたソコへと押し当てる。短い呼吸を繰り返して、だが意を決するとロイはつぷりと指を中へと差し入れた。
「んんっ…くぅっ」
 ハボックの鋭い視線を感じながらロイは懸命に穴を広げていく。立ち上がる自身からとろとろと蜜を零しながらハボックに犯されたくてロイはぐちゃぐちゃと蕾をかき回した。
「ハボォ…っ!挿れ、て…っっ」
 ハボックはくすりと笑うと木箱から体を離す。腰を揺らめかせるロイの尻から指を抜かせるとその腰を抱えた。ひくつく蕾を滾る熱でくちゅりと弄ればロイの唇から熱い吐息が零れる。くちくちと入口を嬲るだけでなかなか挿れてくれないハボックにロイは焦れて声を上げた。
「ハボっ、はやくぅっ」
 その声にククッと笑うとハボックはグイと腰を進める。割り入ってきた熱い塊りに、ロイは全身から汗が噴出すのを感じた。
「あっ…あひぃっ」
 割り開かれたソコを突き上げられるのだと、快感の予感に体を震わせるロイからずるりとハボックが抜き出される。
「え…?」
 そしてまた入口をくちくちと嬲ったかと思うと、僅かに先端が押し込まれまた引き抜かれた。なかなか思ったようにしてもらえない事に、ロイは腰を揺らめかせる。肩越しにハボックを見つめると震える声で強請った。
「やだ…抜かないでっ…奥まで挿れて…っ」
 焦らしに焦らされてもうロイは頭が変になりそうだった。こんなに欲しくて仕方ないのになかなかそれを与えてくれない男をロイは恨みがましく見つめる。
「ハボ…お願い…っ」
 尻を振るロイにハボックは楽しそうに笑うと言った。
「仕方ないっスね。」
 そう言って改めてロイの腰を抱えると一気に根元までねじ込む。ずぶずぶと滾る熱に貫かれてロイは悲鳴をあげながら白濁を撒き散らした。ガツンと奥を突かれて目の前が真っ赤に染まる。柔らかい肉を擦られる快感にロイはぼろぼろと涙を零した。
「ひあっ…ああっ…ああんんっっ…」
 啼きながら尻を振るロイをハボックは楽しそうに見つめる。あの焔の錬金術師ともあろう人物が、男に犯されたくて男のモノをしゃぶり、貫かれて善がっているなど誰が想像するだろう。ハボックはロイをきつく揺さぶりながらその耳元に囁いた。
「ねぇ、このまんまそこの通りに出ましょうか。アンタのいやらしい格好、みんなに見てもらいましょうよ。」
「あ…っ」
 そう言って耳の中に舌を差し入れればロイの体が大きく揺れる。ハボックを含むソコがいやらしく蠢いてロイ自身から熱が糸を引いて零れた。
「ふふ…想像しちゃいました?みんな驚くでしょうねぇ。」
 ククッと笑う声にロイはとろんと蜜を零す。ハボックはロイの腰を掴むといきなり乱暴に抜きさしし始めた。
「ひあっ…ひぃっ…ああっ…あひぃ…っ」
 突然の刺激にロイは堪らず熱を吐き出してしまう。快楽に支配されてもう何も考えることが出来ずに、ロイは嬌声を上げ続けた。
「ああっ…イイっ…あっま、たっ…イっちゃうぅっ」
 背を仰け反らせるとロイは熱を吐き出す。余韻に震える体を容赦なく攻め立てられてロイは気がふれたように悶えた。
「ひいっ…あふうぅっ…イイっ…イイよぉっ」
 快楽に呆けた表情を浮かべたままロイはハボックの望むままに尻を振りたて熱を撒き散らす。自分を貫く熱だけが全てで、もうそれ以外は何も感じられなくなって、ロイはあられもない声を上げながら快楽に溺れていった。
「ああっハボォッ」
 その声に答えるようにハボックは一際奥を突き上げると思い切り熱を叩きつける。
「ひゃああああっっ」
 体の奥底を焼き尽くされて、ロイは満足げに笑うと深い闇の中へと沈み込んでいったのだった。


2007/8/5


書いたのがだいぶ前だったので改めて読み返したらもう、恥ずかしいったら…!一瞬載せるのをやめようかと思いましたよorz 
しかし、ジャクがらみだとこういう話、多いですね、うちのサイト…(汗)どうもワンパターンで申し訳ないです。