くま


「たーいさ、プレゼントっス」
 ノックもそこそこに執務室に入ってきたハボックはなにやら茶色い物体をロイの机の上に置いた。でろんと長い物に机を占領されて、ロイは不機嫌そうにそれを持ち上げる。
「なんだ、これは?」
 ロイの両手に耳を摘まれて持ち上げられたのは、茶色いくまのぬいぐるみ。無表情なくせになぜかやる気のなさを感じさせる無気力そうなくまである。
「いいでしょー、それ。なんか大佐に似てません?」
 眉間にしわを寄せてくまと見詰め合うロイにハボックは嬉しそうに声をかける。
「これのどこが私に似ていると言うんだ」
 眉間のしわをますます深くするロイにハボックは楽しそうに言葉を重ねた。
「そのだらら〜んとしたところが。大佐もしょっちゅうだららんとしてるじゃないっスか。それ、景品所の商品だったんスけどね、もう見るなりこれは大佐だと思ったんスよ。この間買出しした時の抽選券ちょうど持ってたし、絶対あててやろうと思って」
 気合入れて回したら当たったんスよね〜、これって愛の力っスよねなどと楽しそうにほざいているハボックの口元をロイは手を伸ばして思い切り抓りあげた。
「そんなことを言うのはこの口かっ」
「い、いひゃいへひゅ、ひゃいひゃ…」
 手加減なしの行為にうっすらと涙を浮かべているハボックを見て少し気の晴れたロイは、手を離すとそっぽを向いた。
「全く、乱暴なんだから…」
 ハボックは赤くなった口元を擦りながらぼやいた。
「何か言ったか?」
 即座に睨まれて、いいえ〜と呟く。
「大体、抽選で当たったものをプレゼントなんて言うのはモテない男のすることだと思うがね」
 フフンとからかう視線を寄越すロイに可愛くねぇとぼやきながら、ハボックはもう一つ持っていた袋から黄色い丸い物を取り出した。
「なんだ、まだ何かあるのか?」
 覗き込むロイに、これはあげません、近所の子にあげるんでと言いおいて
「こっちはオマケにもらったんスよ。こっちの本も。同じシリーズらしいんスけどね」
「…ひよこ…?」
 黄色の物体には短い羽とタラコの様なくちばしがついている。
「キイロイトリだそうです」
「ひよこじゃないのか?」
「だから、キイロイトリ」
 どこが違うんだと思ったがそれ以上追求するのをやめて、ロイはパラパラと本をめくった。
 そこにはだらだらと横たわりながら音楽を聴いたり、お菓子を食べたり、惰眠をむさぼる茶色いくまとそこここにちらかったゴミをハタキ片手に片付けながらくまを叱るキイロイトリの姿が描かれていた。
「ね、大佐そっくりでしょ?」
 まだ言うかともう一度抓りあげてやろうとしたロイだったが、ふと頑張るトリの姿をみて意地の悪い笑みを浮かべる。
「だったらこのトリはお前だな」
「え?」
「私が散らかしたものをせっせと片付けてるんだろう?それに頭も黄色いしな」
 嫌そうな顔するハボックに気分がすっきりする。全くもう口の減らない などとぶつぶつ言いながらトリと本をしまおうとするのをロイは押し留めた。
「どうせなら、そっちをくれ」
「え、でもくまの方が大きいし、抱き枕にいいんじゃないんスか?」
「でも、そのトリはお前だからな」
「は?」
「抱いて寝る」
 一瞬ぽかんとしたハボックの顔が見る見るうちに朱に染まる。
 ナニ言ってるんスか、アンタとしどろもどろになるハボックの手からトリを奪い取るとかわりにくまを押し付けた。
「お前はこっちを抱いて寝ろ」
 押し付けられたくまとロイを見比べていたハボックだったが徐に口を開いて言った。
「どうせなら本物がいいんスけど…?」
 くまの陰からのぞく空色の瞳が僅かに欲を含んで色を増す。
 そんなハボックの様子に密かに喜びを感じながらロイはうっすらと笑った。


2006/04/26


くまは勿論あのリラックマでございます。我が家には抱えきれないくらいデカイのが1匹とサッカーボール大の3匹のあわせて4匹のキイロイトリがいるのですが、ハボが袋から出したのはこのでかいヤツだと思っております。リラックマの本を見て「絶対ハボとロイだよ!」と思い込んでしまいました。しかし、子供のお気に入りでこんなネタ書いていいのか、自分…。