キスまでの距離


(大佐ってオレより頭一つ分くらい小さいんだな)
 オレは大佐の後ろをついて司令部の廊下を歩きながらそう思う。艶やかに流れる黒髪の中につむじを見つけて、オレは思わず大佐が立ち止まった時にその中心をツンと突いてみた。
「なっ、何するんだっ?!」
 途端に大佐がつむじを押さえてオレを睨みつける。それにへらりと笑って見せて
「つむじだぁって思ったもんで」
 と答えれば、呆れたような軽蔑したような顔をされた。
「馬鹿が」
 大佐はそう言うとふいと顔を背けてしまう。背けられた顔をもう一度見たくてオレは大佐を呼んでみた。
「大佐」
「なんだ」
「大佐ってば」
「だからなんだと言っているだろうっ!」
 何度も呼ぶオレにいらついてそう怒鳴る大佐は、だがオレを振り返ろうとはしない。だから余計にその顔を見たくて「こっち向いて」と言う前に。
「マスタング大佐」
「将軍」
「この間の事件の件なんだがね」
 ちょうど向こうから歩いてきた将軍に大佐は連れ去られてしまった。オレはと言えば車に乗せてつれて出かける筈の人がいなくなってしまって、どうにも出来ずに廊下の壁に寄りかかる。コツンと頭を壁に預けて司令部の薄汚れた天井を見上げれば、自然とため息が出た。

 1週間前、オレと大佐はいわゆる恋人同士ってヤツになった。ずぅっと好きで、でもなかなか告げることが出来なくて、当たり前だ、だってオレは男で大佐も男なんだから。いくら大佐が綺麗でオレよりちっさくても、きっとオレなんかに好きだって言われたら迷惑だろうと、ずっと一人で悶々としていた。でもある時、大佐が事務の女の子から告白されている所に出くわして、この人を男だろうが女だろうが誰にも渡したくないと思った。そう思ったらどうにも黙っていることなんて出来なくて、その日の夜、大佐を家に送り届けた時、玄関先で中に入っていこうとする大佐を引き止めて告白したんだ。
『オレっ、大佐が好きです』
 男にも女にもモテモテで、いつだって誰かしら側にいるようなそんな大佐に、うっとりするような告白のセリフを言いたいと思っていたオレの口から零れでた言葉はなんとも陳腐なそんな言葉。だが、それを聞いた大佐の顔がみるみる内に真っ赤に染まり、そして。
『私もお前が好きだ…』
 ゆでだこみたいに耳まで真っ赤になった大佐から思いもしない言葉が返ってきて。
 オレ達は晴れて恋人同士になったのだった。

(せっかく恋人同士になったのに、大佐、オレのことちっとも見てくれないんだよな…)
 薄汚れた天井を見つめながらオレはぼんやりと思う。やっと両想いになった相手、職場でだってこっそり互いの顔を見つめあうくらいのことあったっていいんじゃないかって思うのに。
(並んで歩いてたって見えんのはいつだって大佐のつむじだもんなぁ)
 ちょっとくらいオレのこと見上げてくれたっていいじゃないか。いつだってまっすぐ前を見て歩いていて。そりゃ前見てなきゃ危ないし、いつだってまっすぐに見据えるその瞳が好きなのだけれど。ちょっと振り向いて見上げてくれたら、そうしたら。
(位置的にはちょうどキスしやすい場所なんだけど…)
 見詰め合うことすら出来なくてキスも何もないもんだと思うけど、それでもちょっと想像してみた。オレを見上げてちょっと上を向いた白い顔、桜色の美味しそうな唇。顎をちょっと持って顔を近づけて―――。
「ハボック」
「うわぁっ!はっ、はいっっ!!」
 突然妄想に声をかけられてオレは文字通り飛び上がった。大佐は一人で顔を染めてあたふたしているオレをビックリして見上げている。あ、この顔、かわいいっ。なんて思っていたら。
「昼間っから何を寝ぼけているんだっ」
 と思い切り頭をど突かれた。
「痛いっスよ、たいさぁ」
「ぼやぼやしているお前が悪いっ」
 大佐は冷たくそう言うとさっさとオレに背を向けて歩き出す。なんだよ、もう少しこっち見てくれてもいいのに。
「将軍のおかげで遅くなった。急ぐぞ」
 振り向きもせずにそう言うと、大佐は司令部の玄関へと向かってしまったのだった。

 橋梁工事の視察を終えて、オレは大佐を車に乗せて司令部へと走っていた。ルームミラーでちらりと大佐を伺えば、窓の外の景色を眺めている。その横顔を眺めてこっちを向いてくれないかなぁなんて思っていたら、急に大佐が身を乗り出して前席のシートの間から顔を出した。
「ハボック」
「うわぉっ」
 突然のことで慌てたオレの動揺がハンドルに伝わって、車体が左右に揺れる。シートの上で転がりそうになった大佐は必死にしがみ付いてオレに向かって怒鳴った。
「何やってんだ、お前はっ!」
「だっていきなり顔出すんですもんっ」
 思わずそう言い返せば、大佐の目がすっと細くなる。
「私の顔は化け物だとでも言いたいのか」
「んなこと言ってないでしょっ」
 ある意味化け物より心臓に悪いことだけは確かだ。そりゃ近くで見たいけど、できれば腕の中に抱きしめて至近距離で見つめてみたいけど、心の準備が出来てないとこでその綺麗な顔を近づけないで欲しい。
「で、なんスか、一体」
 わざわざ顔を出してまでオレを呼んだんだ、何か用があるのだろうと聞いてみれば。
「モラエスストリートのケーキ屋に行きたい」
 などと仰ってくださる。
「たいさ…今勤務時間中だってこと、知ってますよね」
 しかも後10分で会議が始まるのだ。このまま帰ったってギリギリなのに。
「今日、新発売のチョコレートがあるんだ」
 どうしてこの人はこう、甘いものには目がないんだろう。しかも、何でそんな発売日までしっかりチェックしてるんだ。
「チョコなんて別に発売日に買わなくても…」
 そう言ってふと見上げたルームミラーの中でほんの少し頬を膨らませてオレの頭を睨んでいる大佐の顔にオレはぐらりと来てしまった。
「…判りました、行けばいいんでしょ、行けば」
 オレがそう言えば、ミラーの中の顔がぱあっと明るくなる。
「ありがとう、ハボック」
 嬉しそうにそう答える大佐に、中尉には何て言い訳しようと考えるオレだった。

「10分の遅刻です」
 司令部に戻れば中尉が腰に手を当てて玄関で待っていた。流石にケーキ屋の袋を手に中尉の前に立つわけにも行かず、オレは大佐に押し付けられた袋を背中の後ろで必死に隠していた。
「すみません、ちょっと道が混んでて…」
 そう言い訳するオレをジロリと睨んで、中尉は大佐を追い立てる。建物の中に駆け込んでいく二人を見送ってオレはため息をついた。中尉の姿が見えなくなってオレは隠していた袋を体の前に持ってくるとそっと中を覗いた。その中には一口サイズのチョコレートが可愛らしく包装されて入っている。
「こんなもんのどこが美味しいんかね…」
 疲れたときこそ甘いものが欲しくなるが、正直普段は特に食べたいとは思わない。オレは肩を竦めると階段を登って建物の中へと入っていった。ざわつく通路を通り抜けて司令室へと向かう。たどり着いた扉を開ければいつものメンバーが机に向かっていた。
「よお、ハボ。中尉が苛々しながら待ってたぜ」
「入口で会った」
 そう答えるオレの手の袋を目ざとく見つけてブレダが言う。
「おっ、それデセール・ダン・シャリオの袋じゃん。もしかして新作チョコ買ったのか?」
「…お前も知ってんのかよ」
 うちの司令室の人間ってのはどうなってんだよ。そう思ってウンザリしていると、ブレダが手を伸ばしてきた。
「一個味見させてくれ」
「ダメ、これ、大佐のだから」
「一個くらい判らねぇよ」
 そんなことをいいながら尚も伸びてくる手をピシリと払いのけて、オレは執務室に入ると大佐の机の引出しをあけた。その中に幾つも入っているクッキーやらチョコやらの缶を見て、オレはうへぇと舌を突き出す。
「まったく、よくこんな甘いものばっかり…」
 そう呟いて、缶の群れの中に買ってきたばかりのチョコの袋を押し込んだ。そうして執務室から出て行くと司令室の扉が開いて見慣れた、だが本来ならここには居ない筈の顔がひょっこり現れた。
「ヒューズ中佐」
「よっ」
 大佐の気のいい親友は片手を上げて司令室に入ってくる。口々にかかる挨拶の声に軽く答えて中佐はオレに向かって言った。
「ロイは?」
「大佐なら会議中ですよ。って、中佐、いつこっちに来たんです?」
 来る予定があるのなら大佐が言っている筈だ。
「ついさっきな。ちょっと急ぎの用事があってさ」
 そう言ってどっかりオレの席に座り込むと煙草を取り出して火をつける。
「なー、しょういー」
「あー、はいはい」
 気色悪く甘ったれた声を出す中佐に返事をして、オレは給湯室へと向かった。おそらくは仕事に忙殺されているのであろう中佐に、一息入れる為のコーヒーを淹れてやる。大佐の好きなコーヒーをブラックのままカップに淹れて司令室に戻れば、中佐はかわいそうなフュリーを捕まえて愛娘の写真を見せているところだった。
「どうぞ、中佐」
 そう言ってカップを差し出せばにっこりと笑って煙草を消した。
「おお、サンキュ」
 そうしてカップに口をつけてコーヒーを一口飲むとホッと息をつく。
「やっぱ少尉の淹れるコーヒーは美味いな」
「おだてたってそれ以上何もでませんよ」
「えーっ、ケーキとかないの?」
「あるわけないでしょ」
 半ば本気で残念がる中佐に苦笑して言えば、いい年した男が唇をつきだして文句を言った。
「だって、お前さん、前にケーキ焼いてたじゃん」
「ああ、あれはたまたま…」
 どこぞのパーティで出たケーキが美味しかったからまた食べたいと、食べないと仕事をする気にならないなどととても大の男が言うとも思えない駄々をこねた大佐の為に、適当にこんなもんと目星をつけて焼いたケーキを持ってきたときに、ちょうど居合わせた中佐にもケーキを食べさせてやったことがあったっけ。
「よく覚えてますね、そんなこと」
「あれは美味かったからな」
 グレイシアのアップルパイの次に、と目尻を下げる中佐に適当に相槌を打てばちゃんと聞けと殴られた。
「ちゅうさっ、オレ、仕事中なんスけど」
 結構痛かった頭を擦りながら睨みつければ、中佐は「お、そうか」などと言いながら立ち上がった。残ったコーヒーをガブリと飲むとカップを机の上に置く。
「ロイが帰ってくるまでウロウロしてくるわ」
 帰ってきたら教えてな、と言って出て行ってしまう背中に、ウロウロしている人にどうやって知らせるんだよと思ったがメンドクサイから言わずに済ませた。オレは中佐の置いたカップを机の端に追いやると書類を広げる。大佐がいない内に少しでも書いておかないと、なるべくなら残業はしたくない。そう思って煙草を咥えると黙々と書類にペンを走らせる。珍しく電話による邪魔も入らずテンポよく書類を片していくうちに、ふと壁の時計を見上げればもう1時間が過ぎていた。
(そろそろ会議、終わりかな)
 そんなことを考えていると、がちゃりと司令室の扉が開いて中尉が入ってくる。
「お帰りなさい、会議終わったんスか?」
 書類を書く手を止めてそう聞けば、中尉はにっこりと微笑んで言った。
「ええ、取り敢えずね」
「さっき中佐が来てましたよ。大佐に用事があったみたいで」
「そこで会ったわ」
 そう言う中尉に知らせる手間が省けて良かったなどと思いつつ席を立つ。気分転換にコーヒーでも淹れようかと司令室を出て廊下を歩いていると中庭へと抜ける入口のところで中佐と話しこむ大佐の姿が目に入った。楽しそうに笑いながら話す大佐をオレは脚を止めてじっと見つめる。昔からの友人と気安く話す大佐の顔は頭半分高い中佐を見上げて僅かに仰向いて。オレと話すときはいつも前を見据えている黒い瞳は楽しげな色を湛えて中佐に向けられていた。
 なんで。
 オレと話すときは絶対見上げたりしないのに。
 何で中佐にはそんな顔して話すんだよ。
 ざわざわと胸の中に昏い想いが広がっていくオレに向かって、ふと視線をあげてそこにオレが立っている事に気がついた中佐が声をかけてくる。
「お、少尉」
 その声にオレの方を見た大佐のちょっと慌てた様子になんだか酷く傷ついて。
 オレは中佐の声が聞こえないフリで逃げるようにその場を後にした。

「くそ…」
 いく場所がなくてとりあえず飛び込んだロッカールームで、オレはドサリとベンチに腰を下ろした。あんな風に見上げてくる視線をオレは知らない。ずっとずっと前にならそうやって話していたこともあったかもしれない。でも、オレが大佐への気持ちに気がついて一人悩んでいた頃から、大佐とは目を合わせて話したことなんて殆んど記憶にない事に気がついた。司令室で皆と一緒に話を聞くときは大佐はオレの顔を見る。他の大勢を見回すのと同じ視線で。でも、二人きりの時にオレの顔を見て話していたことがあったろうか。特にオレが大佐に好きだと打ち明けてからは、みんなと一緒の時ですらオレに目を向けることがなくなっていた。
「オレのこと好きだって言ったの、夢だったのかな…」
 好きで好きであんまり好きだから、そうなって欲しいと思って夢見たことを現実と混同してしまったのだろうか。
 そう考えてみたら、好きだと言ってからこっち、それらしいことを一度だって口にしたことも無ければ、熱い視線を交わしたことすらない。
「オレ、夢と現実すら判んなくなるくらいあの人のこと好きなのかな…」
 もしアレが夢だとしたら、自分があまりに滑稽で哀れだ。オレは深いため息をつくと頭を抱えて蹲った。

 ホントはこんな気持ちのまま大佐の顔なんて見たくないけど、でも護衛官として大佐を送り届けるのもオレの役目で。オレは痛む頭を抱えながらのろのろと司令室に戻った。
「中佐は?」
「もう帰ったみたいだぜ」
 相変わらず忙しい人だよな、というブレダを置いてオレはさっき書き上げた書類を持って執務室の扉をノックした。
「大佐、これにサイン欲しいんスけど」
 そう言って差し出せば、相変わらずオレの顔も見ずに書類を受け取る。ずきりと痛む胸を押さえて大佐が返して来た書類を受け取ると、オレは大佐に聞いた。
「定刻に上がれるんスか?」
「ああ、車を回しておいてくれ」
 書類に目をむけたままそう答える大佐のつむじを見下ろしてオレはため息をつく。ペンを持った大佐の手がピタリと止まり、大佐は顔を上げぬままオレに問いかけた。
「どうした、ため息なんてついて」
 そんな風に気遣うより、オレのこと見て欲しい。そう思っても何の言葉も出てこない。
「車、回しときますから」
「ハボック?」
 不思議そうにオレを呼ぶ大佐を無視して、オレは執務室を後にした。

 何となく話す言葉も出てこなくて、オレは黙ったまま車を走らせる。ルームミラー越しに大佐を見たけど、深くシートに腰かけた大佐の顔は闇に沈んでよく見えなかった。無言のまま車は大佐の家について、オレはドアをあけると大佐を下ろしてやる。家の扉を開けて中へ入りながら、大佐は僅かに肩越しに振り向いて、でも視線は下に落としたまま、ご苦労だった、と言った。そうして一度もオレを見ようとしないまま一日を終えようとする大佐に、オレは頭にかあっと血が上って乱暴に大佐の腕を掴んでいた。
「っ?!」
 流石にビックリしてオレを振り仰いだ大佐はすぐさま視線を脇へ逸らす。その仕草にますます頭に血が上ったオレは、大佐の両肩をきつく掴んだ。
「なんでいっつもオレのこと見てくれないんスかっ?!なんでっ?」
 そう叫べば大佐はオロオロと視線を彷徨わせる。オレは大佐の顎を掴むとぐいと自分のほうへとその顔を向かせた。
「中佐と話すときはちゃんと顔見て話すのに、オレ以外のヤツとは普通なのに、何でオレとは目を合わせようとしてくれないんスか?」
 辛そうにオレの顔から必死に目を逸らそうとする大佐の様子に、オレは息ができなくなる。
「オレのこと好きだって言ってくれたの、アレ、嘘ですか…?」
 搾り出すようにしてそう言えば、大佐がハッとしてオレの顔を見た。久しぶりに見た黒い瞳に浮ぶ動揺にオレはたまらなくなって大佐を掴む手を離した。
「す、みません…。大佐のこと、好きだって言ったの、アレ、なかったことにしていいっスから…」
「ハボ…?」
「ごめんなさい、嫌な思いさせて、ホントにごめんなさい…っ」
 あの時ホントに大佐がオレの気持ち、受け入れてくれたなんて、どうしてそんな図々しいこと思えたんだろう。
 オレの顔を見るのも嫌なくらい困り果てている事にどうして気がつかないままでいられたんだろう。
 オレはようやくその事に気がついてホッと息を吐いた。
「もう、嫌な思いさせませんから」
 ごめんなさいと呟いて玄関から出て行こうとしたとき、オレの袖を大佐がぎゅっと掴んだ。なにか恨み言の一つも言いたいのだろうかと振り向けば大佐の黒い瞳がオレを見上げていた。
「ハボっ、私は…っ」
 そう言って必死に見上げてくる瞳にオレは優しく微笑み返す。
「ごめんなさい、オレ、馬鹿だから大佐が嫌がってるんだってわかんなくて…」
 そう言った途端、大佐の拳が思い切りオレの頭を殴った。
「ホントに馬鹿だっ、お前はっ!」
 痛む頭をさすって怒鳴る大佐を見つめれば、その瞳からはぽろぽろと涙が零れていて。わけが判らなくて呆然と見つめるオレの胸倉を掴んで大佐が言う。
「私がお前を見られなかったのは、お前がいっつも私をじっと見ているからだ。そんな目で見つめられたら恥ずかしくて…どうしていいか判らなくて…」
 段々と小さくなる声でそう呟く大佐にオレは呆然と目を見開いた。
「え…恥ずかしいって…」
「そんな熱のこもった目で見られて、あっあんまりドキドキして…っ、だからお前を見られなくて…っ」
 小さな声でそう言うと、大佐は真っ赤になって胸倉を掴んだままオレの肩口に顔を埋める。オレはドキドキする胸を宥めて、汗ばむ手のひらをズボンで擦るとそっと大佐の肩を掴んだ。びくりと震える体をそっと引き離して俯く顔を覗き込む。
「えと…オレと目を合わせてくれなかったのは、ただ恥ずかしかったから…なんスか?」
 そう聞けば、大佐は眦を染めたまま小さく頷く。困ったように視線を彷徨わせる大佐の頬を両手でそっと包むとオレは大佐に囁いた。
「たいさ、オレのこと見て?」
 ぴくんと震えて、大佐はそれでもオレのことを見つめてくれる。恥ずかしそうに頬を染めて、熱に濡れる瞳で必死に見上げてくる大佐にオレはそっと囁いた。
「オレ、大佐が好きです。大佐はオレのこと好きですか?」
 そう聞けば益々顔を紅くして、それでも必死に顔を上げたまま大佐が答える。
「すっ、すきだっ」
 小さく、でもはっきりとそう返って来る答えに、オレは嬉しくて叫びだしそうになった。俯きそうになる顔を両手でそっと持ち上げて大佐に言う。
「キスしてもいいっスか?」
 そう言われてはっとしたように目を瞠る大佐はオレの顔を見つめて、それから小さく頷いた。オレは小さく笑うとそっと唇を近づけていく。ちゅっと触れて話そうとすれば、大佐の唇がオレを追いかけてきた。
「ハボ…」
 桜色の唇がオレの名前を形作って。
 オレは大佐の体を抱きしめると今まで近づけなかった距離を全部埋めてしまうように、何度も何度も口付けたのだった。



2007/6/6


実はちょっとばかりハボロイがスランプです。とにかくちっとも書けませんorz そこで、イベントでも企画でもリクでもない、何も決まりのない話を書いたらちっとはリハビリになるかなぁと書いてみたのがこれなんですが…。なんだ、この高校生みたいなふたりわっ!いい年した大人の行動じゃありませんね…。なんだかリハビリになったんだかかなり微妙ではありますが。とりあえずお楽しみいただければと…。