淫猥な彼ら2


 ズボンの内に吐き出されたそれが乾いてごわごわと肌を擦る。ロイは不快感に眉を顰めると机に座って何やら書類に書き込んでいる男を見つめた。ロイが見つめているのを知ってか知らずかハボックは時々考え込みながらペンを走らせている。ロイはため息をつくと執務室の扉を開けて中に入りぐったりと扉に背を預けた。2週間ぶりに顔を合わせたハボックと勤務時間が始まってさほど時間もたたない内にここで肌を合わせた。ハボックに飢えた心と体は留まる所を知らず、時間切れだとハボックが体を離した後も、熾火のようにロイの体を苛んでいた。浅ましいと嫌悪する自分と今すぐメチャクチャに乱されたい自分と、相反する気持ちを持て余して、だが表面上は何事もなかったようにロイは業務をこなしていた。


 ようやく夕方になり終業時間になる。ロイはハボックに車を回させると家に向かうよう告げた。お互い一言も話さず、車は夕方の町並みを抜けて行く。家に着くとハボックは扉を開けてロイを下ろすと先にたって玄関の扉を開けた。ロイを通して自分は入り口に留まる。見上げてくるロイの瞳の中に欲望の焔を見つけてうっすらと微笑んだ。
「大佐、オレ、これから小隊の連中と飲み会なんスよ」
 その言葉にロイの瞳が見開かれるのをうっとりと見つめてハボックは続ける。
「何時になるか判りませんけど帰ってきますんで」
 だから、約束、と囁いてハボックはロイを引き寄せると唇を合わせた。ロイの口中を乱暴に舌で弄り、それと同時にズボンの上から双丘の狭間へぐいと指を差し入れた。びくりとロイの体が跳ねるのに満足げに微笑むとハボックはロイを放した。呆然と見上げてくるロイの頬にキスをする。
「いい子にしててくださいね」
 そういい置いてロイの言葉を待たずに扉を閉めると、ハボックは軽い足取りで車に向かった。


 ばたんと目の前で閉じられた扉をロイは呆然と見つめた。自分が今日一日、どれだけハボックが欲しくて仕方なかったかハボックが気づいていない筈はない。それなのに自分を置いて出かけてしまうなんて。しかも今もわざと自分の欲望を煽るような真似をしてそのまま放り出した。ロイはよろめくと壁にトンと背中をぶつけて、そのまま力なくもたれかかる。
 一体いつからこんなになってしまったのだろう。いつどんな時も心の大半をハボックの存在が占めていて、ハボックへの欲望が渦巻いている。ほんのちょっとでもつついたらそこから止めどなく溢れてしまいそうで、それを押さえる為にエネルギーの大半を注いでいるような状態だ。ロイは自らの肩をかき抱くと熱い吐息を零した。壁に手をついてゆっくりと歩を進めると浴室へと向かう。なんとかそこへ辿りつくと軍服を脱いでいった。ごわついたズボンを脱ぐと、ちょっと考えてゴミ箱へ放り込んだ。全裸になって浴室へ入るとシャワーのコックを捻る。緩く出したシャワーを身に浴びながら、壁に片手をついてもう一方の手を己の蕾へ沈めた。
「ん…」
 くちゅりと動かせば入り口から昼間ハボックが注ぎいれたものが零れてきた。次から次へと溢れてくるソレにロイは情けなくてうっすらと涙を浮かべた。全てかき出すとゆっくりと指を引き抜く。足元を見ればシャワーの湯と混ざり合って白濁した液が流れて行った。軽く頭を振って無理矢理それから意識を逸らす。ざっと体を洗うとロイはシャワーの温度調節を思い切り冷水の方へと回した。冷たい水が頭の上から降り注ぐのを喉をそらして受け止める。だがどんなに冷たい水をかぶったところで体の奥で燃える熱は冷めることがなかった。


「隊長、なんか今日、ご機嫌ですね」
 何かいいことでもあったんですか、と尋ねてくる部下を適当に往なしてハボックはうっすらと笑った。煙草を吸おうと胸元を探って、パッケージが空になっていることに気づく。
「わり、一本貰ってもいいか?」
 ハボックは普段吸っているのとは違う銘柄の煙草を受け取って火をつけるとゆっくりと吸い込み煙を吐き出した。
 出掛けに自分を見上げてきたロイの瞳が忘れられない。欲望に染まって濡れた瞳は自分が欲しいと訴えていた。昼間、執務室でロイを抱いた時も酷く乱れて際限なく求めてきた。ハボックの求めるままに体を開き、ハボックの熱が欲しいが為にどんな屈辱的な要求も黙って受け入れていた。抱けば抱くほどロイの要求は留まる所を知らず、貧欲に求めてくる。
 あの取り澄ました顔のどこにあんな淫らな心が隠れていると、誰が思うだろうか。出掛けにわざと熱を煽るようなことをしてきたが、今頃彼はどうしているだろう。熱い体を持て余して一人身悶えているだろうか。彼を愛していて、大事にしてやりたいと思う一方、酷い目にあわせて散々に啼かしてやりたくて仕方がない。今すぐにあの綺麗な顔を歪ませて縋り付いて来る姿が見たくなって、ハボックは立ち上がる。
「隊長?」
 訝しげに見上げてくる部下に笑いかけて、ハボックは湧き上がる欲情に追い立てられるようにして店を後にした。


 バスローブだけを身にまとってロイはベッドの上に横たわっていた。いつ帰ってくるのか知れぬ男を待つ身には、ひどく時計の針が進むのが遅く感じる。身に籠る熱を持て余してロイは何度か自身に手を伸ばそうとしたが、最後のプライドで己を慰めることだけはしないでいた。ロイはゆっくりと体を起こすと窓の外をのぞく。玄関の先からずっと続く道を男の姿を求めて辿る視線にロイは自嘲ぎみに笑った。裸足のままベッドを降りて、階段をくだると玄関の扉を開けた。
 夜気は僅かに湿気を含んでロイに纏わりついてくる。靴を履かずに外へ出ると中庭へ回った。刈り揃えられた芝が素足にちくちくとあたる。こんなことをしていても熱が収まるわけでもなく、ロイが頭を振って家の中へ戻ろうとしたその時。
 突然暗闇の中から伸びてきた手に後ろから抱きすくめられる。バスローブの胸元から入り込む手にロイは身を捩って逃れようとするが相手の強い力に地面に押さえ込まれてしまった。後ろから圧し掛かって来る相手にローブの裾を割られ中心を乱暴に掴まれて身を竦ませた。
「ひ…っ」
 そのまま上下に扱かれて、もともと熱を持て余していた体は瞬く間に登りつめていく。
「やめ…っ」
 首を振ってその刺激をやり過ごそうとするが背筋を駆け上がる強烈な快感にロイはびゅくびゅくと熱を吐き出していた。
「あああああっっ」
 一瞬飛びかけた意識が奥まった蕾に宛がわれた熱い塊に引き戻され、ロイはぎくりと身を強張らせた。酒臭い息とロイの知らない煙草の香りを纏った背後の男が何をしようとしているのかに気づいて必死に身を捩る。
「いやだっ、やめ…っ」
 みしっと。まだ堅く閉ざされた蕾を強引に押し分けて熱い塊が押し入ってくる。逃げる体を押さえつけて、ロイの狭い器官を宛がわれた欲望が一気に貫いた。
「ひああああっっ―――っっ」
 ロイの口から悲鳴が上がり、鉄臭い香りがあたりにただよった。激痛にかすんだ意識の中に快感の兆しを見つけてロイは怯えた。誰だかわからない男にこんな目に合わされても感じてしまうなんて自分が情けなくて許せなかった。
 黒い瞳からぼろぼろと涙を零しながらロイは喘いだ。がんがんと突き上げてくる動きにロイ自身が快感を蓄えて張り詰めていく。もうこのまま死んでしまいたいとロイが思ったとき、最奥を突き上げられて耐え切れずにロイの中心が白く弾けた。
「ハボック…っっ」
 本当に自分がこうされたいと望んでいた男の名がロイの唇から零れた時、背後の男がぎくりと身を強張らせた。突然動きを止めた相手にロイは逃れようと身を捩った。その時、ぐっと脚を持ち上げられたかと思うと繋がったまま強引に体を反された。達したばかりの敏感な襞をぐるりとこすられロイは悲鳴を上げる。その顎を掴まれて深く口付けられ、ロイは力なく相手の胸を拳で叩いた。角度を変えて一瞬離れた唇から漏れた掠れた囁きにロイはハッとして目を開いた。焦点が合わないほど近づいた相手の顔を見つめる。ロイがぐいと押し返すと唇が離れた。
「…ハボック…」
「たいさ…」
 自分を犯していた相手がハボックだとわかった途端、ロイは猛然と暴れだした。ハボックはロイの体を抱きしめてその抵抗を封じる。
「お前…っ、たばこ…っ」
「え…?」
「いつもと違うっ」
「あ…切らしちまって他のヤツのを…」
「知らないヤツだと思って…っ、私は…っっ」
 暴れて泣きじゃくるロイを抱きしめてハボックはうっとりと微笑んだ。誰だか判らない相手に犯されていると思いながらもその快楽に流されるロイに怒りと嗜虐心に支配されレイプ同然にその体を引き裂いた。その唇から自分の名が零れたのを聞いて、どれほど自分がロイの心を支配しているのかを知り、湧き上がる喜びとその全てを支配したい欲望に駆られる。ハボックはまだロイの中に埋めたままの己でゆっくりとロイを突き上げ始めた。
「う…あっ…やだ…」
 いやいやと首を振るロイを押さえ込んでハボックは囁く。
「どうして…?散々よがってたじゃないっスか」
「ちが…っ」
「オレじゃなくても良いのかと思いましたよ…?」
「ちがう…っ」
 詰られてロイは涙を零した。
「お前でなきゃ、いやだ…っ」
 その言葉にロイの中のハボックが更に熱を増す。
「あ、あ…おっき…っ」
「たっぷり可愛がってあげますよ…」
 そう言ってハボックは乱暴に抽送を始める。傷ついたソコは鮮血を流しながらもイヤらしくハボックに噛み付いていた。
「ひあっ…あんっ…あ、あっ」
 脚を高く抱え上げられ考えられないほど奥を犯されて、ロイは悲鳴を上げて意識を手放した。


 気がついたときには煌々とした明かりの下、ベッドに横たえられて脚を大きく開かされていた。傷ついた入り口をハボックの舌が這い回るのにぞわりとした快感を感じてロイは体を震わせた。ロイが意識を取り戻したことに気がついたハボックが笑いを滲ませた声で囁く。
「アンタ、痛いの好きですよね」
「そ、んなこと…っ」
「だって、ほら…」
 傷ついた蕾に指を突き入れられ乱暴にかき回される。痛みとそれによってもたらされる快感にロイの体が震え、中心からとろりと蜜が零れた。
「いっ…ああっ…んあっ…」
「いやらしいなぁ…」
 くすくすと笑うハボックにロイは涙を滲ませた。辛いのにそこから体が蕩けそうに感じてハボックが欲しくて欲しくて仕方がない。無意識に腰を揺らめかせて先を強請るロイにハボックは目の前が赤く染まるような錯覚に陥る。ロイの脚を高く抱え上げると一気に突き入れた。
「あああああっっ」
 びゅくびゅくと熱を撒き散らしながらロイが悲鳴を上げる。熱い塊に押し開かれる快感にロイは我を忘れて叫び続けた。
「あっあ…イイっ…んあっ…き、もち、イイっっ…もっと…ハボッ…もっと、し、てっ」
 熱い襞が淫猥に絡みつきハボックを噛んでいく。ハボックは双丘を押し開くとぐいぐいと己を沈めていった。
「くぅぅっ…いた…あ…ハボックぅ…」
 ロイはハボックの首に手を回すと無我夢中でその唇を貪った。舌を差し入れ煙草の苦味のする口内をかき回す。二人の唾液が混ざり合ってロイの唇の端から零れていった。
「ハボック…ハボ…っ」
 腰を振って善がるロイにハボックは苦笑した。
「ホントにいやらしい体っスね。そんなに美味いんですか、これが」
 がくがくと頷くロイからハボックはずるりと己を引き抜いた。
「やっ…ぬくな…っ」
 しがみ付いて来るロイの髪を宥めるようにかき上げると、ハボックはロイの体を離し、俯せに反した。その腰を高く上げると猛る自身をロイの蕾に押し当てる。
「今、挿れてあげますよ…」
 そう言ってずぶずぶとロイの中へ己を沈めていった。
「ひゃああっっ」
「ほら、もっと締めて」
 そう言いながらロイを突き上げ、空いた手で蜜を零すロイ自身を擦り上げる。がんがんと突き上げられ、そそり立つ自身を乱暴に扱かれてロイは体中を快感に支配されてもう何も判らなくなっていった。あられもない声を上げて自分の体の下で身悶えるロイにハボックは煽られてますますロイを攻め立てた。
「あ、ああっ…や、あっ…ああ…すご…イ、イっ」
「た、いさっ…すげ…っ、アンタも、すごい、イイっスよ…っ」
 がつがつと突き上げるハボックにロイはびくびくと体を震わせて熱を吐き出すと同時に含んだハボックをぎゅっと締め付ける。
「く…っ」
 ハボックは体をぶるりと震わすとロイの中へ熱く滾る液体を叩き込んだ。


 ぐったりとベッドに沈むロイの髪をハボックは撫でる。殆んど力の入らない腕を上げてロイはハボックを引き寄せた。その唇が強請るようにハボックの名を囁くのを聞いてハボックは苦笑した。
「アンタもう、腰ぬけてるでしょ」
 明日通常勤務なのに、と苦笑するハボックの胸元にロイは顔を埋めた。もっとハボックが欲しくてもっと自分に縛り付けておきたくてロイはハボックの項に舌を這わせる。くつくつと笑うハボックをロイは不満げに睨みつけた。
「また二人きりで打ち合わせしましょうか…?」
 見つめてくる空色の瞳に情欲の揺らめきを見つけてロイはハボックを引き寄せてうっとりと笑った。


2006/8/2


「淫猥な彼ら」の続きですー。どんどん二人が壊れていく気が〜。最近エロエロばかり書いているので、少しはちゃんと話のあるのを書きたいと思いつつ、パソの前に座るとこんなのばかりが溢れてきます。ああ、困った。