dog panic


「ただい…ま…?」
 と言って、リビングの扉をあけて入っていったオレの目に飛び込んできたのは、でっかいシェパードに圧し掛かられた大佐の姿だった。
「なっ…」
「ああ、おかえり、ハボック」
 ソファーに寝そべった大佐の上に圧し掛かった犬は、べろべろとでっかい舌で大佐の頬を舐めている。
「気がついたら庭に入り込んでたんだ」
「庭に?」
「首輪をしているから野良じゃなさそうだが」
「ドッグタグつけてないんスか?」
「ないな」
 大佐は薄っすらと笑って犬が顔を舐めまわすままにさせている。オレはその姿に胸がムカムカして、犬の首輪をむんずと掴みあげた。
「この馬鹿犬っ!大佐に乗っかってんじゃねぇよっ!!」
 でかいだけに重たいが、それでもオレは犬を無理矢理大佐から引っぺがした。
「おい、乱暴にしたら可哀相だろう」
 きゃんきゃん情けない声を上げる犬に大佐が手を伸ばす。大佐に頭を撫でられてくぅんと甘えるような声を出すソイツに、オレはムカっ腹が立って思わず軽くケリを入れた。
「ハボック!」
 途端に咎める大佐にますます面白くなくて、オレは無言のままキッチンへと向かう。大佐はしばらくソイツの頭を撫でてやっていたが、徐に立ち上がると、キッチンへとやってきた。大佐の足元には当然のようにバカ犬がつき従っている。
「ハボック、今日の昼飯…」
「今、用意しますっ」
「コイツの分もな」
 そう言ってにっこり笑う大佐にオレはぶるぶる震える指で犬を指差した。
「なんでコイツにまでメシを食わせなきゃならないんスかっ?!」
「だってかわいそうだろう、一人除け者にしちゃ」
「いいじゃないっスか、飼い主いるみたいなんだし。外に出しゃ勝手に帰っていきますよ」
 オレがそう言い放つと大佐はムッと唇を突き出す。
「お前って、冷たい…」
「あのねぇっ」
「いいじゃないか、一食くらい食わせてやったって」
 酷いヤツだなぁ、とシェパードに話しかける大佐に、オレは思わず犬をぶん殴りそうになる手を握り締めた。
「…わかりましたよ、食わせりゃいいんでしょ、食わせりゃ…っ」
 オレは振り絞るようにそう言うと、乱暴に冷蔵庫の扉を開けたのだった。


 大佐とオレにはパスタとサラダを、憎ったらしいシェパード野郎には鶏のささみを食わせてやって(一瞬玉ねぎでも混ぜてやろうかと思ったが)、オレはガチャガチャと食器を洗っていた。満腹になった大佐と犬は、仲良くリビングのラグの上に体を投げ出して寛いでいる。大佐にべったり寄り添ってその毛を撫でてもらっている犬を見るにつけ、頭にカッカと熱が上ってオレは乱暴に食器を洗った。なんとか割らずに食器を洗い終えてリビングに入っていったオレを見上げて大佐が言う。
「なあ、この間お前が持って帰ってきたアレ、どこにある?」
「アレ?」
「うん、フライングディスク」
「2階の物入れにつっこんでありますけど」
「2階だな」
 大佐はそう言うと犬に待っているように言い置いて2階へ上がっていく。ソイツは立ち上がると、大佐の背を心配そうに見つめていた。その殊更にオレを無視したような態度に腹が立つ。
「おい、お前。とっとと家に帰れよ」
 そういうオレをちらりと見やって、だが、きちんと座って大佐を待つソイツの首輪をオレはぐいと引っ張った。
「メシも食わせてやったろ。早くご主人さまのところへ帰れっての」
 ぐいぐい首輪を引っ張ると苦しそうにぐるぐると喉を鳴らすくせに、ソイツはびくとも動かなかった。この野郎と引く腕に更に力を込めようとした時、2階から大佐が下りてきた。
「何やってる、ハボック!」
「べっつに、家に帰れって言ってただけっスよ」
 オレはそう言いながら首輪から手を離す。大佐はシェパードの前にしゃがむと首の辺りの毛をわしわしとかき混ぜながら責めるようにオレを見上げた。
「まったく、どうしてそうコイツを虐めるんだ」
 大人気ない、と言うと大佐は立ち上がって手にしたフライングディスクを犬に見せる。
「ほら、これで遊ぼう」
 そう言ってひらひらとディスクを振れば、犬が嬉しそうに尻尾を振りながら大佐に纏わりついた。
「おいで」
 と犬を誘って大佐は庭に出ていく。大佐にくっついて歩いていた犬が扉をくぐる寸前にちらりと振り向いたその顔が、勝ち誇ったように笑っているように見えて、オレは慌てて大佐の後を追った。
「ほら、行くぞっ」
 大佐は庭に出た途端、ディスクを空に向かって投げ飛ばす。シェパードは軽やかにソレを追うと、地面を蹴って飛び上がり空中でキャッチした。そうして得意げな顔でソレを大佐のところまで持ち帰ってくる。大佐はディスクを受け取るとわしわし頭を撫でてやった。
「よし、上手いぞ」
 そう言って嬉しそうに笑うと、大佐は何度もディスクを投げ上げる。楽しそうに遊ぶ二人の姿が面白くなくて、オレは二人の間に割ってはいると、大佐が投げたディスクを犬がキャッチする前に横取りしてしまった。
「ハボック!」
 抗議の声を上げる大佐を無視して庭木の向こうへディスクを投げ上げる。ガサガサッと音を立てて枝の中へ飛び込んだディスクを背にオレは家の中へ駆け戻ってしまった。乱暴に扉を閉めて2階に駆け上がると寝室に入りベッドの上に身を投げ出す。ぼすんと枕に顔を埋めて、まるで子供のような自分の行為を途端に後悔した。
「犬にヤキモチなんて、馬鹿じゃないの、オレって…」
 そう声に出して言えば、ますます自己嫌悪に陥る。はああ、とため息をついて目を閉じると、カチカチと時計の音が部屋の中に響いた。
 そうしてどれほど時計の音に耳を傾けていたのだろう、カチャリと音がして寝室の扉が開くと大佐が入ってきた。ベッドに寝転ぶオレの姿を見ると、呆れたようなため息をつく。なんだか居た堪れなくてぎゅっと枕を抱きしめて顔を埋めた。
「まったく、お前は…」
 そう言ってオレの髪を撫でる大佐に、へそ曲がりな言葉が零れる。
「アイツと遊んでりゃいいじゃないっスか」
 ぼそっと呟くオレに大佐は苦笑すると言った。
「帰ったよ。飼い主が迎えに来た」
「で、遊んでくれるヤツがいなくなったからコッチに来たわけっスか?」
「お前なぁ…」
 大佐は心底呆れたという声で言うと、言葉を続ける。
「あの犬の飼い主、お前も見ればよかったのに」
 ちらりと見上げるオレに大佐は笑った。
「綺麗な黒髪を短く切りそろえた美人でな、どことなく似てるから懐いたんだろうって彼女も言ってたよ」
 そう言う大佐にオレは不貞腐れた声を上げた。
「自分のご主人を他の人と間違えるなんて、やっぱりバカ犬っスよ」
 そう言うオレに大佐はくすくすと笑いながら言う。
「お前は間違えないのか?」
 オレはごろりと仰向けになると腕を伸ばして大佐を引き寄せた。
「アンタは誰にも似てませんもん。アイツだって似てるからじゃなくてアンタだから懐いたんでしょ」
 そう言って腕の中に抱きしめた人に口付ける。大佐はくすくすと笑いながら囁いた。
「うちの犬はヤキモチ妬きで困るがな」
 楽しそうな大佐を睨みつけると、オレは大佐を抱きこんで体を入替えると大佐の体をベッドに沈める。
「べっつに妬いてなんていませんよ」
 あんなバカ犬相手に、と殊更なんでもないように言って見せるが、それが強がりなのはバレバレで。エラく楽しそうな大佐が悔しくて噛み付く様に口付けた。
「ふ…ん…」
 合わせる唇から零れる甘い吐息に気持ちが昂っていく。耳の後ろを強く吸い上げるとぴくんと大佐の体が震えた。そのまま唇を首筋に滑らせ、時折きつく口付けると白い肌に綺麗な紅い印が残った。
「ば、か…痕、つけるな…」
 微かに身じろいでそう言う大佐の言葉を無視して好きなように花びらを散らしていく。ぴくぴくと震える体に気をよくしてシャツをくつろげると大佐の胸元に唇を這わせた。
「んあっ」
 舌先で押しつぶすように舐めて、空いた手でもう一方を捻りあげる。
「ひぅっ!」
 びくっと震える体は背を反らして、もっといじって欲しいと強請るような仕草に見えた。
「ココ、いじられんの、好きっスよね…」
 意地悪くそう囁けば途端に反論の声が上がる。だが、大佐の中心はズボンの布地を窮屈そうに押し上げて、大佐が胸をいじられて感じていることを示していた。オレは大佐のズボンを剥ぎ取ると、下着の上からやんわりとソコを握りしめた。先端をくりくりといじってやるとじんわりと下着に染みが浮かび上がる。
「もうこんなにして…」
 ヤラシイと囁けば頬を染めて睨み返してくるその気の強さが愛しかった。オレは下着を取り去ってしまうと、とろりと零れる蜜を辿って棹に指を這わせる。
「ね、舐めてあげましょうか…?」
 犬みたいに、と呟くオレの言葉に大佐の頬がますます紅くなる。でも、イヤだとは言わないからオレはうっすらと笑うと大佐の中心に唇を寄せた。付け根から先端までゆっくりと舐め上げるとびくびくと震えてとろとろと蜜を零す。大きく開いて押さえつけた脚がうっすらと汗ばんで大佐の指が誘い込むようにオレの髪をかき回した。
「あ、ん…ハボ…」
 甘えるような声にオレは大佐自身をくわえ込んだ。じゅぶじゅぶと唇で擦り上げると、感極まったような声が零れる。
「あんっ…ハボ…ああんっ」
 空いた手で袋を揉みしだきながら棹に舌を這わせる。唇を舌で締め上げてきつく吸い上げると、大佐がオレの口の中へ自身を押し込むように腰を持ち上げた。次の瞬間大佐が白く爆ぜてオレの口中へ熱を吐き出してくる。熱いソレを一滴残らず飲み干すと、オレは体をずらして大佐の顔を覗き込んだ。瞳を閉じて荒い息を零す大佐は堪らなく色っぽい。オレは汗に濡れた前髪をかき上げるとその額にキスを落とした。うっすらと目を開けて見上げてくる濡れた視線に背筋をぞくりとしたものが駆け抜けた。オレは大佐の体を俯せに反すとその双丘を押し開いて舌先を差し入れる。びくんと震えてずり上がろうとする体を引き戻して、丹念に濡らしていった。
「んんっ…ぅんっ…」
 びくびくと震えて大佐はシーツを握り締める。その表情が堪らなくてオレはズボンをくつろげると熱く滾った自身を取り出し、ひくつく大佐の蕾へと押し当てた。ずぶりと、その狭い器官に押し入れると大佐の体が強張るのがわかる。何度体を繋げても、この瞬間だけはどうしても辛いらしく、力の入る体を宥める為にオレは大佐の中心に指を這わせた。少し萎えてしまったそれを上下にすりあげながらゆっくりと身を沈めていく。熱い襞に包まれていく感触は、たまらない快感をオレに与えた。根元まできっちりと埋め込むと、背後から大佐の体に手を這わす。ぷくりと膨れ上がった乳首を摘み上げると、大佐の唇から熱いため息が零れ、オレを含む部分がきゅっと締まった。胸をいじりながら耳の付け根や首筋に舌を這わせる。びくびくと震える体に合わせるようにオレを締め上げてくるのが、堪らなくキモチよかった。
「ハボ…っ、はやくっ」
 誘うように腰を揺らめかせる大佐にオレはくすりと笑うとその耳元に囁いた。
「どうして欲しい?」
「あ…わかってるくせ…っ」
「言わないなら抜いちゃおうかな…」
 そう言ってずるりと自身を抜こうとすれば大佐のソコがぎゅっと絡み付いてきた。
「ヤダっ」
 びくびくと体を震わせて大佐は肩越しにオレを見つめる。
「ついて…っ…いちばんおくっ」
 欲に濡れた黒い瞳にオレは我慢ができずに思い切り突き上げる。
「んあああっっ」
 背筋を仰け反らせて悲鳴交じりの声を上げる大佐をオレはガンガンと突き上げた。
「あっ…んあっっ…ハボ…ハボっ」
 中心から白濁を迸らせて崩れ落ちそうになる体をぐいと引き寄せて、オレは乱暴にゆすり上げる。淫猥に絡み付いてくるソコが悦くて、オレは無我夢中で大佐を犯した。
「やあ…ん…ハボ…きつ…っ」
 あまりの激しさに音を上げた大佐が逃れようとするのをさせまいと、オレは強引に大佐の片脚を持ち上げてしまう。開いた脚の間に深々と己を突き進めると、大佐の唇から嬌声が上がった。
「あっ、アァ―――ッ!」
 背を仰け反らせて何度目かの熱を大佐が放つ。ぎゅうと締め付けてくるソコに流石に抗いきれずに、オレは大佐の最奥へ熱を解き放った。


「気が済んだか?」
 この、ヤキモチ焼きの犬め、と囁いて、ようやく収まりかけてきた熱を煽るようなキスを大佐がしてくる。
「別に妬いちゃいないですってば」
 往生際悪くそういえば大佐がくくっと笑って身を寄せてきた。舌を差し出して唇を舐めてくるから同じように舌を出せばちょろちょろと舌先で触れてくる。ぴちゃ、と舌を絡ませあえばずくんと体の奥で火が灯る音がした。
「まだ、気、済んでないみたいっス…」
 そう言ってベッドに押さえ込めば楽しそうに大佐が笑う。笑みを浮かべた唇に引き寄せられるように、オレは大佐に圧し掛かっていった。


2006/12/9


以前、猫に嫉妬するロイの話を書いたので、今度は犬に嫉妬するハボの話です。大人気ないハボック…(汗)
そういえば昔、親戚の家にシェパードがいたのですが、凄くデカくて、牙とか爪とかマジ尖がってて、コイツに飛び掛られたらホントに怖いだろうなぁと思ったものです。デカイ犬ほど躾が大事でリードがなくても「つけ」でちゃんとついてこないと、と言うので6ヶ月も訓練校に入ってたくせに、飼い主の言うことは全然聞かないとんでもないヤツでした。