desire


 作戦終了をうけて部下に指示をだすハボックの声が聞こえる。その声のする方へ気配を消して近づいていけばこちらに背をむけて立つ背中が目に入ったと思った瞬間、撃鉄の上がる音がしてピタリと私に銃を向けるハボックと目が合った。
「…大佐…!」
 銃を向けた相手が誰だかわかるとゆっくりと銃を持った手をおろす。
「アンタね、気配消して近づくと撃たれますよ」
 不機嫌そうな声でそういうハボックはいつもの青い軍服ではなく、体にフィットした黒の上下とコンバットベストという出で立ちだ。
「作戦成功だそうだな、ご苦労だった」
 そういう私の背後を透かし見てハボックが眉を顰める。
「アンタ、護衛はどうしたんです?」
「さあな」
 そう答えるとますます眉間の皺を深めてハボックが聞いてくる。
「アンタがここに来ていること、中尉は知ってるんですよね…?」
 その問いにうっすらと笑った私に答えを察してハボックは自分の腕を乱暴に掴んだ。
「大佐っ!いい加減にして下さい!ここはね、まだ安全が確認されちゃいないんスよ!そんなところに護衛も付けず のこのことやってきて、しかも中尉達に一言の断りもなく―――」
「中尉に言ったら出てこられんだろうが」
 ハボックの言葉に被せてそう言えば乱暴に引き寄せられた。
「大佐っ!」
 いつもは茫洋としてそう簡単に怒り出したりしないハボックだが、このスタイルの時は怒りの沸点が低い気がする。そうわかっていてわざと怒りを煽るような言動をするあたり、私もどうかしていると思わないでもない。ハボックは怒りを抑えるようにゆっくり息を吐き出すと部下の曹長を呼んだ。
「司令部に連絡を入れてくれ。大佐がこっちに来ているってな。なるべく早く連れて帰るから安心するようにと」
 敬礼を返して連絡を入れるべく曹長の背を見送っていたハボックだったが、副長に2、3指示を出すと、私の腕を引いて歩き出した。
「帰りますよ。中尉、きっとカンカンですからね、知りませんよ」
 そのまま数ブロック歩いた所でぴたりと立ち止まった私にハボックは訝しげな視線を投げかけてきた。
「車、すぐそこっスから」
「せっかく労いに来てやったのに」
 そう言う私に空色の瞳が僅かに見開かれる。
「ご苦労だったな…」
 言葉を囁きに乗せてハボックの唇に自分のそれを合わせた。


「んっ…ふ…」
 路地裏の荷物の陰で必要な部分だけ衣服を寛げて体を重ねる。壁に手をついて後ろを向けといったハボックに首を振って正面から男を受け入れた。壁に背を預けて片足をあげた姿勢は正直楽ではなかったが、背を向けてしまったら欲望に色を深めたその瞳を見ることが出来ない。それでは体を繋げる意味も半減するというものだ。
 私を貫く男の 汗に濡れた金髪をかき上げて深い青にそまる瞳を覗き込んだ。目が合った瞬間激しく突き上げられて背筋を駆け上がる快感に目が眩む。無意識に咥えたものを締め付ければ目の前の瞳が切なげに細められた。
「ぅあっ…あ、あ、ああ…っっ」
 激しく揺さぶられて目の前が真っ白になる。私が達したのに続いてハボックの熱が中に広がるのをうっとりと感じていた。激しい呼吸の合間にハボックが出て行こうとするのを感じて首に回した手を強く引いてそれを引き止める。行くなと囁けば困ったような笑みを浮かべてそれでも私の腰を引き寄せて、動きを止めた。
「…ジャクリ…」
 唇をあわせながらその名を呼ぶと男の肩がひくりと震えた。
「…その名で呼ばんで下さい」
 はっきり言って萎えます、と続ける男のそれは、しかし私の中でじわりと僅かに体積を増した。
「アンタ、オレのこの格好、好きっスよね」
 そう言いながら髪をかき上げてくる。なんで、と囁きかけてくるのにうっすらと笑みを浮かべて肩口に顔を埋めた。
「喰われそうな気がする…」
 微かに呟いたのを聞き逃さず大きな手のひらで私の顔を包み込んで正面から見据えてきた。
「オレに喰われたいんスか、アンタは…」
 欲望を滾らせた深い青に染まった肉食獣の瞳。その瞳で見つめられてぞくりと背筋を快感が駆け上る。男は小さく笑うと力を取り戻した楔でゆっくりと突き上げた。
「いくらでも喰らってあげますよ…」
 囁きとともに激しく揺さぶられて喰われる喜びに歓喜の声をあげた。


2006/5/22


安全確認されてないんじゃなかったんですか(汗)いやもう、我慢のきかない連中で…(滝汗)
desireって「性的関係を持ちたいと思う」って意味もあるんですね〜。