カクテル


「たいさ、アンタすごいメロン味」
 ベッドの上で私に覆いかぶさりながら口付けていたハボックが唇を離すと呆れたような声で言った。
「メロン味?」
 そう言われてメロンなんて食べていないぞと考える。首をひねる私にハボックが言った。
「なんかメロン味のもの、食べたんじゃないんスか?」
 ハボックの言葉に今日の晩餐会のメニューを思い浮かべる。デザートは上品な甘さの柿を使ったケーキだった。メロンなんて出てこなかったぞと言おうとして、ふと思い至った。
「カクテルだ」
「カクテル?」
 何種類かあった食前酒の中にメロンを使ったカクテルがあったのだ。珍しいので飲んでみたところ、まるでメロンジュースの味だった。メロンジュースのくせに酔っ払うなんて、まるでだまされているような酒だと思ったのだ。
「メロンのカクテルなんて珍しいっスね」
「だろ?だから試しに飲んだんだが…。でも1杯だけだったし、そのあと散々飲み食いしたんだぞ」
 カクテルを飲んだのは食事が始まる前で、しかもそのあとフルコースの食事を食べて、最後にコーヒーまで飲んだのだ。それなのにまだ香るとはそれはそれでちょっと気持ちが悪い気もするが。そんなことを考えていると、ハボックがまた圧し掛かってきた。
「ま、いいっスけどね」
 たまにはこんなのも、と言いつつ深く唇を合わせてくる。
「ん…」
 思わず零れた甘い声に俄かに羞恥を煽られて、ハボックの体を押し返した。
「メロン味なんて、自分では全然わからないぞ」
 照れ隠しのようにそう言うとハボックがぺろりと唇を舐めてくる。
「吐息がね、メロン味なんスよ」
 食べたくなります、と言って唇を甘く噛むハボックに、背筋をぞくりと快感が駆け上がった。
「ハボ…っ」
「なんスか?」
 うっすらと笑いながらハボックが手を滑らせる。乳首をきゅっと摘まれて思わず背が跳ね上がった。
「あっ」
 くにくにと指先でこねられて息が乱れる。
「感じるとメロンの香りが濃くなるみたいっスね」
「え…?」
 何を言っているんだとハボックの顔を見上げると、時折見せる意地の悪い笑みを浮かべていた。
「胸だけでイかせてあげる…」
 そう言うとハボックは両手の指で乳首を玩び始めた。押し付けるように潰したかと思うと、きゅっとつまみ上げ、堅く立ち上がった乳首の先を爪で引っ掻く。
「いやっ…あっ」
 そんな風にいじられて、いやだと身を捩っても、ハボックはやめてくれるどころか一層きつく愛撫を加えだした。ハボックに抱かれるようになるまで、ソコがそんなに感じるなんて全く知らなかった。女のように胸をいじられて喘ぎ声を漏らすなんて、正直信じられない。
「ああっ…あんっ…あっ」
 でも、ソコから走る快感はダイレクトに下肢に伝わり中心が痛いほど堅くそそり立っていくのがわかる。
「やだっ…ハボっ…も、やめっ」
 顔を寄せながら胸を弄るハボックの肩を押し返しながらそう言っても、ハボックはくすくすと笑うばかりでやめようとはしなかった。きゅうっと絞り上げられて中心が白く爆ぜる。全然触れられてもいないのに胸への刺激だけで本当にイってしまった事に信じられずに呆然と宙を見上げたまま荒い息を零した。
「ああ、ほら、甘く香ってる」
 ハボックが顔を寄せて楽しそうに囁いた。こういう時のハボックはひどく意地悪だ。私が何を言おうと絶対に聞いてはくれない。
 ぽろりと涙が零れたと同時に、自分でもどうしたのか判らないほどにぽろぽろと涙が零れてきた。子供のようにしゃくり上げるのを止められなくて腕の中に顔を埋めて小さく体を丸める。そんな私にハボックがびっくりしておろおろと背中を擦った。
「ちょっ…どうしたんスか、たいさ…」
 そう言いながらまるでさっきの意地悪だったハボックがうそのように優しく抱きしめてくる。その胸に顔を摺り寄せて小さく息を吐くとハボックが零れる涙を指ですくって頬に口づけてきた。
「たいさ…」
 そう呼びながら何度も何度も口付けてくる。甘い囁きに心も体も溶け出していくようだ。
 甘い甘い吐息に、囁きに気がついたときにはすっかりと酔わされて、中毒のように求めることをやめられなくなる。今日飲んだカクテルは淡い緑色だった。もし、ハボックという名のカクテルがあったなら、それはきっと綺麗な空色に違いない。甘いそれに気がついたときにはしたたかに酔わされて、もう二度と手放すことが出来なくなる。
 ハボックの背に腕を回すと、甘い囁きを零す唇にそっと自分のそれを寄せていった。


2006/10/10


サン○リーでしたっけ。メロンのカクテルっていうカクテル缶。アレを飲んでみたんですが、まるでジュースのようでした。まあ、私のようにお酒ダメな人にはピッタリと思いますけど、お酒飲める人にアレはきついだろうなぁ、甘すぎて。で、飲んだ後、随分経ってからでもなんだか息がメロン臭いんですよ。別に嫌な匂いじゃないからいいんですけど…。あんまり強烈だったのでロイに飲ませてみた次第です。