| 薔薇の言葉 ロイver |
| ノックの音にドアのレンズを覗けば、そこにはバラの花束を抱えて立つハボックがいた。 ―――何だってこんな時間に? 不思議に思いつつもドアを開ける。 「ハボック…?」 そう問いかける私に 「入ってもいいっスか?」 と言うその瞳は真剣で。思わず気押されるように頷いて、中へと通してしまった。間接照明だけに照らされた薄暗い室内にハボックは私の後について入ってきた。部屋の中央辺りまでいくと後ろを振り向いて殊更何でもないように尋ねる。 「どうした、こんな時間に。しかもそんな花束持って。まさかセントラルにいい女性でも見つけたのか?」 自分でそう言っておいてチクリと胸が痛んだ。コイツは本当はモテることを知っている。何かにつけて「モテない男」だと言ってやるのは、そう言っておけば少しでもコイツに近づこうとする連中を遠ざけておけると思ったからだ。「モテない、モテない」と連呼することでそう思わせたかっただけだ。そんな私の気持ちを知ってか知らずかハボックは真正面から見つめて口を開いた。 「大佐、この間オレにいいましたよね。バラの話 してた時。オレに枯れた白バラくれるって」 ぎくり、と体が震えた。 「最初聞いたとき、オレすごいショックだった。ああ、またからかわれてるって。だって、枯れた花に花言葉があるなんて思わなかったから。でもそうじゃなかったんスよね?」 何を、言ってるんだ、コイツは。まさか。 「…花言葉、調べたのか…?」 そんなはずあるわけない。コイツが花言葉に興味を持つなんて―――。 「はい。グレイシアさんに教えてもらいました」 ――――知られた。 そう思った瞬間かあっと頭に血が上ってとっさに目をそらした。 シラレタ、シラレタ。モウダメダ。キットケイベツサレル―――! 目の前が真っ暗になって息が止まりそうになる。遠くに話し続けるハボックの声が聞こえた。 「大佐にどんな色のバラが欲しいか聞いたとき、そんなの自分で考えろって言われたっスよね。だから、オレ一生懸命考えたっス。どれを選んでもオレの気持ち全部なんて表せないけど…、でも」 そう言ってハボックが呆然と立ち尽くす私に向かって持っていた花束を差し出したのが目の端に映った。 「オレの気持ちっス。受け取ってください」 え?だって、それは。ハボックがもっているのは綺麗な紅色のバラだ。その花言葉の意味は。 「アンタに死ぬほど恋焦がれています」 弾かれるようにハボックを見た。 ウソだ、そんなことコイツが言うわけない。だって、いつだって酷い事言ってきたんだ。自分の気持ちを知られたくなくて、でも、誰にもコイツを渡したくなくて。いつもいつも酷い事を言ってきた。私の言葉に向けられる瞳を見て、傷つけたことも知っていた。でも、どうしても止められなくて。 ハボックが焦れたようにもう一度花束を差し出してきた。 こんなの、自分勝手な夢かも知れないのに。でも、もしこの花束を受け取ってもいいのなら。 震える手をゆっくりと伸ばした。触れる前に消えてしまわないようにと願いながら。 「キスしていいっスか?」 手にした花束は消えなかった。それどころかハボックは優しい声でそう聞いてくる。 「そんな事を聞くからお前はモテないんだ」 ―――違う。そんなことを言いたいんじゃないのに。 それでもハボックは微笑んで、私をバラごと抱え込むとゆっくり唇を重ねてきた。 「ん…」 ずっと触れたいと思っていたソレはハボックの香りがした。いつもコイツが吸っているタバコの香り。歯列を割って入り込んでくる舌が口中を蹂躙する。知らず逃げる舌先を絡めとられて深く口付けられた。怯える体が小さく震えたがハボックは更に強く抱きしめてきた。抱えるバラの香りが強く感じられて、自分がまだ花を抱えたままなのに気がつく。腕を突っ張って 「花がつぶれる…」 といえば、苦笑して花束を取って近くのテーブルの上に置いた。そうしてもう一度向き合ってくる瞳に、囚われたように身動きが出来なくなる。 「大佐…」 そう呟くように言ったと思うと、ハボックはいきなり私を横抱きに抱えあげた。 「なっ…」 突然のことに慌てて押し留めようとするが、強い腕はそれを許してくれない。ハボックはそのまま続き扉を開けて寝室へ入っていく。目の隅にベッドが入って思わず体が強張った。そのままベッドにそっと下ろされて、額にかかる髪をかき上げられる。不安に押しつぶされそうになる私に、ハボックは微笑んで、そして囁いた。 「アンタを愛しています」 泣きそうになった。思わずハボックの首にしがみついて。 いつもいつも酷い事ばかり言っていたのに、なんでなんでなんで。 しがみつく私を強く抱きしめてハボックは口付けてきた。待ち望んでいたそれに無我夢中で。角度を変えて深く口付けられるたび、自分でも信じられない甘い吐息がこぼれた。どちらともなく舌を絡めあって、むさぼりあって、飲みきれない唾液が唇の端からあふれて、濡れた水音がこぼれても、ずっと飢えていた心はまだ足りないと叫んでいる。 ハボックが焦れたようにシャツを剥ぎ取っていく。大きな手のひらで直に触れられて、心が震えた。喉元を強く吸い上げられてチクリとした痛みを感じる。何度も何度も与えられる小さな痛みに大きく体がしなった。胸元に降りてきたハボックの舌が嬲るように飾りに這わされる。空いた手でもう一方も弄られれば信じられない快感が体を突き抜けた。 「あ…っ」 思わず漏れた声が自分の声だと気づくいたのは数瞬たってから。何度も何度も舌を這わされて頭が変になりそうだ。 「やっ…も…ヤダ…」 ハボックの髪を掴んで引き離そうとしたが、力の入らないそれはむしろ引き寄せる仕草に見えたかも知れない。気がついたときには胸に這わされていた手がズボンにかかっていた。ビクリと思わず体を震わせると 「大丈夫だから…」 と囁かれて抵抗する間もなく下着ごと一気に引き摺り下ろされていた。羞恥のあまり悲鳴のような声がこぼれ、両腕で顔を覆った。私だけがどんどん乱されていくのに耐えられない。優しく抱きしめてくるハボックに小さな声で告げた。 「私ばかり脱がせて、なんでお前は服を着たままなんだ…っ」 既に一糸纏わぬ姿にされている私に対してハボックはきっちり服を着たままだ。告げられて初めてその事に気づいたように慌てて服を脱ぎ捨てると、再びゆっくりと抱きしめてきた。直に肌と肌が触れる感触に堪らず大きく体が震えた。強く抱きしめられ口付けられて、絡められてくる舌に無我夢中で答えた。体中に降ってくる優しいキスに知らず甘い吐息がこぼれた。突然自身に濡れた舌を這わされて驚きのあまり体が震える。 「あ…っ、や…っ、やだっ…」 耐えられずに身を捩って逃げようとするが許してもらえず、むしろ一層深くくわえ込まれて追い上げられていく。何度が強く吸い上げられて耐え切れずにハボックの口中へ放ってしまった。 「はあっ…っ、あ…っ」 あまりのことに思考がついていかない。うっすらと目を開くと自分を覗き込むハボックの空色の瞳が見えた。空色が目の前に広がって、キスされているのだとわかる。くたりと力が抜けて思うように体を動かすことすら出来ずにいると少し体が持ち上げられて腰の下に何かあてがわれ、そっと体を折り曲げられる。 「ハボック…?」 不安に思って名前を呼べば「大丈夫だから」と優しい声がした。と、突然思いもしない箇所に濡れた舌先を感じてびくりと体が跳ねた。信じられない行為に逃れようとする体を押さえ込まれて、ゆっくりと唾液を流し込まれる。やっとハボックの舌が離れてホッとしたのもつかの間、つぷりと彼の長い指が埋め込まれた。 「ひ…っ、やぁ…っ」 違和感に吐き気がしそうだ。それでもゆっくりとかき回すようにうごめく指は気がつけば2本、3本と増やされていった。その時、長い指先が奥まった1点を掠め、体の中心を電気が駆け抜けたように大きく跳ね上がった。それは確かに快感と呼ばれるもので、何度も触れられればあられもない声が上がる。 「ひゃぁ…っ、ああっっ…、あ…っっ」 「ここがいいの…?」 と低い声で耳元で囁かれて、いやいやとかぶりを振った。もうどうにかなりそうだ。 こんなことをされて快感に感じるなんて。その時埋め込まれていた指が突然引き抜かれ、熱く滾ったハボック自身が私の身を一気に引き裂いた。 「ああっ、あ―――っ」 思わず逃げようとする体を引き戻されて、尚も身を進めようとするハボックに、貫かれる痛みに強張った体はそれを拒んだ。 「大佐、力ぬいて…」 そう囁くハボックに 「そ…んなの、ムリだ…っ」 と呟けば、瞳から涙がこぼれた。すると、ハボックの手が前に回され、ゆっくりと梳きあげられた。ビクリと震えた体から僅かに力が抜けたのを逃さずにハボックが一番奥まで体を進めた。私の中を満たす、大きく熱い塊に息が止まりそうになる。その時頬をそっと撫でたハボックが囁くのが聞こえた。 「大佐…愛してます…」 閉じていた目蓋を開けば空色の瞳に私が映っているのが見えた。 「愛してます…」 もう一度囁かれて、暖かいものが胸にあふれて泣きそうになった。ゆっくりと腕を彼の背中に回す。 「動きますよ…?」 というのに微かにうなずいて。ゆっくりとした抽挿がだんだんと激しさを増していく。奥まった箇所を何度も突かれて耐え切れず喘ぎが漏れた。ハボックの動きにどんどん高みに追い詰められていき―――。 「ああああっっ―――」 私が高みに達するのを追いかけるように、ハボックの熱い精が私の中に放たれるのを感じた。 何度も求めて求められて、気がつけば気を失うように眠りについていた。やわらかなまどろみの中優しい視線を感じてゆっくりと意識が覚醒していく。目蓋を開いて見ればそこには優しい笑みを浮かべて私を見守るハボックがいた。 ぼんやりとして何度か瞬くうち、突然昨夜のことがよみがえってきた。あまりの恥ずかしさにハボックの腕から抜け出そうともがいたがあらぬところに痛みを感じて、小さく呻くとベッドに沈み込んだ。 「大佐…?」 声をかけてくるハボックを、照れ隠しにわざと不機嫌を装って見つめた。声を出そうとした喉はひどく痛んで。 「喉が痛い…」 と囁いた声は恥ずかしいほどしわがれていた。昨夜どれだけ声を上げさせられたのか知らされるようで恥ずかしさに死にそうになる。慌ててベッドから抜け出したハボックは、冷蔵庫からミネラルウオーターを出しグラスについでベッドまで持ってきた。しかし、それを受け取ろうにも体が全く動こうとしない。 「起き上がれない…」 と視線で要求すれば、抱え起こして口元にグラスをあててくれた。こくこくと水を飲んでホッと息をついて、恨めしげに睨んでやれば。 「す、すんません…。手加減できなくて…」 う ろたえてそう言ってくるのにどぎまぎして、ハボックを見ていられずにそっぽを向く。 「だって、アンタ、可愛すぎ…」 そう呟かれてカッと顔に熱が上がった。思わずハボックの耳を思い切り引っ張る。 「この、バカ犬っ」 あまりの恥ずかしさにやけになってぐいぐい耳を引っ張ってやった。そのまま腕の中にいることすら恥ずかしくて抜け出そうとするのを優しく抱きしめられる。 「大佐、大好きです」 「知るか、バカ犬っ」 「愛してますよ」 「誰がお前なんかっ」 嬉しそうに微笑むコイツに素直になれなくて、相変わらず憎まれ口を叩いてしまう。 そんな私をやさしく抱きしめて、口付けてくるのに泣きそうに幸せを感じた。 いつか自分の気持ちを素直に伝えることが出来る日が来るそのときまで、想いをこめて、花を贈ろう。 2006/04/30 |
| ハボverを書いたのでここはやっぱり「一粒で2度おいしい」を目指さねばということで書いたロイver。でも3度も書くとやっぱりしつこいので後半部分だけにしたらエロばかりになっちゃいました…。 |