豆騎士 風邪薬編


 ベッドでうつらうつらしていたハボックはドンドンと扉を叩く音で目を覚ます。何か喚いている声もきこえたが、熱でぼうっとした頭ではなかなか意味をもった形にならなかった。
 久しぶりに酷い風邪をひいてしまった。朝目が覚めてみたら体の節々が痛く頭がガンガンする。なんとなく熱いような気もしたのでそんな事はないだろうと思いつつくわえた体温計が指し示した数字は三十八度を越えていた。流石に体を起こすとフラフラするし、これでは演習に参加しても三発もパンチを当てられそうにないと、仕方なしに休むと連絡を入れた。寝てれば治るとベッドに入った途端急激に症状が悪化し、今に至っているのだった。
「うるせぇ……いい加減帰れよ……」
 起き上がる気力もなくブランケットに頭まで潜るがその程度では扉を叩く音を遮る事が出来ない。しつこく鳴り響く音にハボックは歯を食いしばるとバッとブランケットを跳ねのけて体を起こした。
「あ……」
 その途端目が回ってハボックはシーツに突っ伏す。それでも何とか立ち上がり壁に縋って玄関に向かった。
「ぶん殴ってやる、コノヤロウ……」
 実際には腕を上げる力もないが、ハボックは目を吊り上げて思う。扉の近くまで来て、ハボックは聞こえる声に聞き覚えがあることに気づいた。
「えーと……」
 ノブに手を伸ばしながら考えるが頭が働かない。カチリと鍵を回せばこちらが扉を開けるより早く外から扉が開いた。
「少尉ッ!風邪って大丈夫なのかッ?!」
「――――大将?」
 扉を開ければ立っていたのは金髪金目の少年。普段は旅から旅への年下の恋人がどうしてここにいるのか咄嗟には判らず、ハボックは熱に霞む頭を傾げた。
「なんでここにいんの?」
「なんでって……心配して来たに決まってんだろッ!」
 エドワードはぽやんとして尋ねるハボックの様子にムッとして言う。
「司令部行ったら少尉が風邪で休んでるっていうから、ビックリして様子見に来たんだよ」
「ああ、そうなんだ……」
 エドワードの言葉にハボックは笑みを浮かべた。
「熱で幻覚が見えたのかと思っ――――ゲホゲホゲホッ!!」
「少尉ッ」
 言いかけた言葉の途中で激しく咳き込んで体を二つに折るハボックの背中を、エドワードは慌ててさする。暫く咳が続いた後、ハボックは「あー」とため息混じりに言った。
「折角来てもらっても何にも出来ないけど……」
「少尉に何かしてもらおうなんて思ってねぇよ」
 そもそも自分は見舞いにきたのだ。
「中入ってもらっていいか?なんかゾクゾクする……」
「あっ、ごめん!寝てたんだよな」
 寒いと大きな体を丸めるハボックをエドワードは慌てて家の中に押し込み扉を閉める。壁に縋りながら歩くのに肩を貸して、エドワードはハボックの顔を見上げた。
「大丈夫か?」
「うん、なんとか……」
 寝室まで戻ってくるとハボックはもぞもぞとベッドに潜り込む。肩の上までブランケットを引き上げてくれるエドワードを見上げて言った。
「ごめんな、折角こっち来たのにメシも作ってやれなくて……」
「気にすんなよ。俺が看病するから早く良くなってよね、少尉」
「はは、ありがと……」
 エドワードの言葉にハボックは軽く笑って目を閉じる。気を失うように瞬く間に眠ってしまったハボックをエドワードは心配そうに見つめて額にそっと手を伸ばした。
「すげぇ熱……。ちゃんと薬飲んだのかな」
 触れれば燃えるように熱い額に、エドワードは眉をしかめる。キッチンへ行きボウルを引っ張り出して氷水を入れるとタオルも持って寝室に戻った。氷水でタオルを絞りハボックの額に乗せてやる。熱のせいで白い肌を上気させ熱い息を零すハボックにちょっぴりドキドキして、エドワードは慌てて首を振った。
「少尉は病気だっての!」
 なかなか会えない年上の恋人。やたらと男にモテるくせに本人はぽやんとしてるのが心配でたまらず、会えば濃厚なセックスで己を刻みつけるのが常だ。そんな事をしなくてもハボックが他の誰かに心移りしたりしないのは判ってはいたが、やはりそこはまだまだ若い事もあり好きな相手の顔を見れば我慢出来ないというのが本音だった。だが。
「流石にそう言う訳にいかないよなぁ……」
 こんなに苦しそうなのにどうこう出来る筈もない。それにエドワードとしては、普段なら離れていて出来ないところを、丁度タイミングよくイーストシティに寄って看病出来るのが嬉しくて堪らなかった。
「なんか消化のいいもんでも作るかな……」
 エドワードはそう呟いてキッチンへと行く。だが冷蔵庫の中には牛乳と何やら野菜の切れっ端しかなく、エドワードはがっかりと肩を落とした。
「牛乳なんて飲んだら余計具合悪くなるっての」
 エドワードはそう決めつけて冷蔵庫を閉じる。食事が作れないならと、引き出しを引っ掻き回して風邪薬を取り出した。
「俺が一発で治る風邪薬を錬成してやる」
 エドワードはそう言って数種類の錠剤をテーブルに出す。パンッと合わせた両手を錠剤の上に翳せば金色の光が迸った。徐々に光が消えて後には新しい錠剤が出来て、エドワードはそれを摘み上げてニヤリと笑う。
「よし、完璧」
 エドワードは自信満々に言うとコップに水を注ぎ寝室に行く。荒い息を零して苦しげに眠るハボックの枕元の棚にコップと錠剤を置くと、ハボックの体を軽く揺すった。
「少尉……少尉、ちょっと起きて」
 何度か揺すって声をかけると金色の睫が震えて空色の瞳が現れる。熱に潤んだ瞳で見上げて、ハボックは言った。
「大将……?」
「オレがよく効く風邪薬作ってやったから飲めよ」
「風邪薬……大将が……?」
「おうよ、これ飲めば一発で治るぜ」
 ニヤリと笑ってエドワードはハボックが体を起こすのを手伝ってやる。ハボックの口に錠剤を押し込み、グラスを口元に当てて水を飲ませた。
「サンキュ……大将」
「おうよ」
 ほわりと笑って言うハボックに内心ドキリとしながらも、エドワードはなんでもないような顔をして答える。ハボックの体をベッドに戻してやって、タオルを絞って額に乗せた。
「これでもう安心だぜ。明日の朝には元気一杯になってるからな」
「うん……」
 エドワードの言葉にハボックは微かに笑って頷く。そっと目を閉じたハボックはだが数分もしないうちに目を開けて言った。
「なんか……すげぇ熱い……」
「えっ?熱上がった?」
 自信満々お手製の薬を飲ませたのにそんな筈は、とエドワードは慌ててハボックの顔を覗き込む。そうすればハボックが腕を伸ばしてしがみついてきた。
「大将……熱い……――――シよ……」
「えッ?!」
「熱いんだ、なんとかして……」
「んんッ」
 苦しげに呟いた唇を押しつけられてエドワードは目を剥く。擦り付けられる下腹は既に熱を孕んで立ち上がり始めていて、エドワードはドキドキしながら間近に迫るハボックの顔を見た。
「たいしょお……」
「ッ!!」
 熱に潤んだ空色に強請るように見つめられ心臓が跳ね上がる。熱い息を零す唇を首筋に押し当てられて、エドワードの理性がボンッと弾け飛んだ。
「少尉ッ!」
「あ……ッ」
 エドワードはしがみついてくる躯をベッドに押し倒す。噛みつくように口づければすぐさまハボックの舌が押し入ってきて、エドワードは夢中で己のそれを絡ませた。
「ん……んふ……」
 そうすればハボックが甘く鼻を鳴らしてエドワードの首に腕を絡める。更に長い脚をエドワードの腰に絡めてそそり立った楔をこすりつけた。
「たいしょう……」
「少尉ッ」
 グリグリとハボックは楔をエドワードの下腹に押し付ける。布地越しに感じる熱さに、エドワードはゴクリと喉を鳴らした。
「早く……も、我慢出来な……っ」
 普段なら恥ずかしがってなかなか口にしないハボックの強請る言葉に、エドワードは急いで服を脱ぎ捨てる。すると伸びてきたハボックの腕がエドワードの腰をグイと引き寄せた。
「えっ?少尉?――――ッ!ちょ……ッ?!」
 ハボックは引き寄せたエドワードの脚の間に頭を突っ込んだと思うと少年の楔を咥える。ハボックの顔を跨ぐようにベッドに膝立ちになったエドワードは、己の楔を咥えるハボックを信じられないように見つめた。
「少尉ッ?うあ……ッ」
「ん……ん……」
 クチュクチュと楔をしゃぶられエドワードは直接的な刺激に喉を仰け反らせる。ともすれば快感に力が抜けて尻を落としそうになるのを、ハボックの金髪に指を絡めて必死に耐えた。
「少尉、ヤバイ……も、出る……ッ」
 ハアハアと息を弾ませてエドワードは言う。だがハボックは口を離すどころか一層深く咥え込みきつく吸い上げた。
「少――――ッ、うああああッ!!」
 どうにもこらえきれず、エドワードは背を仰け反らせて熱を吐き出す。ドクドクと注がれる熱をハボックは飲みきれず、逸れた切っ先から溢れた熱がハボックの顔を濡らした。
「たいしょう……」
「ッッッ!!!」
 白濁で汚れた顔でエドワードを見上げてハボックが甘えたように呼ぶ。唇に残る白濁を紅い舌がペロリと舐めるのを見て、エドワードはパジャマ代わりのスウェットを毟り取り、ハボックの脚を乱暴に押し開いた。
「あっ」
 エドワードは押し開いた脚の付け根、双丘の狭間で戦慄く蕾を晒すと顔を寄せる。ヒクヒクとイヤラシくヒクつく蕾に舌を這わせた。
「あふ……あっあっ……」
 普段ならこんな事をしたら羞恥のあまり泣き出すハボックが、腰を揺らし両手で脚を持ち上げて自ら恥部を晒す。そそり立った楔からタラタラと蜜を零してハボックが言った。
「あん……たいしょ……気持ちイイ……」
「ッ!!」
 そう言われてエドワードは夢中になって舌を蕾に潜り込ませピチャピチャと舐める。エドワードの舌の動きに応えるように蕾が収縮を繰り返した。
「はあ、ん……ッ!イイ……ッ」
 頭上から聞こえる喘ぎ声にエドワードは興奮しきって鼻を膨らませる。顔を上げると鋼の指を唾液に濡れそぼった蕾にねじ込んだ。
「アアアッ!!」
 グーッと一気に根元まで押し込むと、ハボックが喉を仰け反らせて喘ぐ。乱暴にグチョグチョと掻き回せばハボックが腰をくねらせた。
「アアッ、指!気持ちイ……ッ!!」
「少尉……ッ」
 普段は機械鎧の指で弄るとその太さと固さが与える快感に怯えてすぐにも「抜いて」と訴えるハボックが素直に快感に溺れている。そのあまりのイヤラシさにエドワードは一気に三本まで指の数を増やしグチャグチャと乱暴に掻き回した。
「ヒィィィッッ!!」
 そうすればハボックが高い嬌声を上げて背を仰け反らせる。それと同時にエドワードの顔に楔から迸った白濁がビュビュッとかかった。
「うっそ……すげぇ……」
「あ……ふぁ……」
 射精して弛緩する躯をベッドに投げ出すハボックをエドワードは目を見開いて見つめる。まだ埋めたままの指をヒクつく蕾がきゅうきゅうと締め付けた。
「たいしょお……」
 じっと見つめる視線の先、ハボックがエドワードに手を伸ばす。エドワードの顔を汚す白濁を指先で拭うとその指をペロリと舐めた。
「たいしょう……大将の欲しい……」
「しょ、少尉……ッ」
 蕩けた表情でハボックが強請る。ハボックは投げ出していた脚を両手で抱え上げ脚を大きく開いて言った。
「大将のオチンチン挿れてェ……」
「ッッッ!!!」
 あまりに強烈な色香にエドワードは鼻を押さえる。たらりと垂れてきた鼻血を手の甲で拭うと、エドワードは乱暴に指を引き抜いた。
「アアッ!」
「今、挿れてやるッ!!」
 エドワードはハボックの脚を抱えて押し開く。大きく開いた脚の間に己の体をねじ込み、戦慄く蕾に痛い程に張り詰めた己を押し当てた。
「たいしょ……」
「しょおいッッ!!」
 うっとりと呼ばれ、エドワードは裏返った声で叫んで腰を押し付ける。焦るあまり二回狙いを外した後、指で味わった秘窟に楔を突き入れた。
「ヒアアアアッ!!」
 ズブズブと一気に押し込めばハボックの唇から甘い悲鳴が上がる。ズコズコと激しく抜き差しする楔に熱い内壁が絡みつき、エドワードは目も眩むような快感に頭がクラクラした。
「すっげぇッ、すっげぇイイッッ!少尉ん中めちゃくちゃ熱くてッ、絡みついてッ!」
「アひぃッ!もっと……ッ、奥突いてェッ!」
 激しい抽挿にハボックが身悶える。きゅうきゅうと締め付けてくるのに抗って抜き差しすれば、逃がすまいとするように絡みついてくる肉襞の熱さが堪らなかった。
「少尉ッ!イイッ!すげぇッ、こんなの初めてッ!!」
 ハボックとの行為はいつだって最高に気持ちよかったし、幾らヤってももっともっとシたかった。だが、これほどまでに強烈な快感を感じたことはなく、常にないハボックの乱れようと相俟ってエドワードは無我夢中でハボックを攻め立てた。
「少尉ッ!少尉ッ!!」
「ひゃううッ!ヒィィッ!イくッ!イくゥッ!!」
 ガツガツと突き入れればハボックが嬌声と共に熱を迸らせる。それと同時にエドワード自身をキツく締め付けた。
「くぅぅッ!」
「ンアアアアッ!!」
 想像以上のきつい締め付けに、エドワードは耐えきれずにハボックの奥底に熱を叩きつける。楔を中に押し込むようにしながら注ぎ込んで、エドワードはため息を零した。
「……気持ちイイ」
 ハアと息をついてエドワードは言う。ハアハアと息を弾ませるハボックを見下ろし、エドワードはニヤリと笑った。
「もっと欲しい?少尉……」
「……欲し……」
 囁けば激しい息の合間に強請るハボックにエドワードの楔が嵩を増す。
「ああん……っ、おっきい……」
 するとそれに応えるように甘ったるい声を上げるハボックにエドワードは乱暴に長い脚を抱えなおした。
「いっくらでもしてやるぜッ、少尉ッッ!!」
 言うなりガツガツと突き入れて、エドワードは思うままにハボックを攻め立てた。

「それで?風邪で高熱を出して寝込んでいるハボックに怪しげな薬を飲ませた挙げ句散々ぱら無体を働いて、おかげでハボックは更に体調を悪くして欠勤と言うわけだ」
「や、でもさッ、俺としては少尉の風邪を早く治してやろうと風邪薬を錬成しただけでッ」
「どうやったら風邪薬からそんな強力な媚薬が錬成出来るんだ……」
 風邪薬を作ったつもりだっんだと必死に主張するエドワードにロイは額に指を当ててため息をつく。ハボックが風邪と聞いてぶっ飛んでいったエドワードが数種の風邪薬を錬成して作ったのはとてつもなく強力な媚薬だった。それを飲んだハボックは訳も判らずエドワードを強請り、それに応えたエドワードと激しいセックスを繰り返し――――。そして、媚薬の効き目が切れた今、ハボックは心身共に絶大なダメージを受けてベッドに伏せっている。
『もう顔も見たくねぇ……大っ嫌い……ッ』
 必死に謝るエドワードにハボックは羞恥のあまり潜り込んだブランケットの中から、嬌声を上げすぎて掠れた声で言ったきり顔を見せてはくれなかった。司令部にハボックの欠勤を知らせる電話を入れたエドワードはロイに呼び出され、何とか誤魔化そうとしたものの結局ことの次第を説明させられたのだった。
「久しぶりに会った恋人とついうっかりヤりすぎてしまうのは、何とか目を瞑ろう。風邪だと聞いて早く治してやりたいと風邪薬を錬成するのも、できあがったのがたまたま媚薬だったのもまあ許そう。だがな、鋼の」
 と、ロイはズイと身を乗り出してエドワードを睨む。
「媚薬を飲まされて訳が判らなくなったハボックを起き上がれなくなるほど攻め立てるのは容認出来んぞ。そうでなくとも人手不足なんだ。一人で三人分働くハボックを長期にわたって休ませるなんて」
 ギロリと睨んでくる黒曜石に、エドワードは首を竦めた。
「悪かったって!でも少尉、めちゃくちゃエロくて」
 そう言えば夕べのハボックの痴態が思い出されてエドワードの頬が弛む。それを見たロイがバンッと机を叩く音に、エドワードは慌てて顔を引き締めた。
「とにかく、ハボックの抜けた穴は鋼の、君に埋めてもらうからな」
「えっ?でも少尉の看病しなきゃだし!」
 激しいセックスで更に体調を崩したハボックの看病をしなくてはと言うエドワードにロイは顔をしかめる。
「看病にはフュリー曹長に行って貰う。これ以上ハボックに何かされたら堪らん」
 そう言えば「えーッ」と不満の声を上げるエドワードをロイはギロリと睨んだ。
「なにか不満があるのかね?」
「――――ありません」
「それならよろしい」
その後エドワードはハボックが復帰してくるまでの三日間、ロイに散々こき使われたのだった。



2014/03/23