豆騎士 星に願いを編


「あっ、流れ星!」
 食事を終えてアパートの窓辺に並んで腰掛けて涼んでいれば、不意にハボックが空を指さして声を上げる。それに促されるように空を見上げたエドワードの耳にハボックが早口に言うのが聞こえた。
「腕ッ、脚ッ、体ッ!腕ッ、脚ッ、体ッ!腕ッ、脚ッ、体ッ!!」
 大声で喚くのに、エドワードは目を丸くしてハボックを見る。言い終えてハアハアと息を弾ませている様に、エドワードはプッと吹き出した。
「なんだよ、それ」
「えー?だって流れ星に三回願い事言うと願いが叶うっていうじゃん」
 ちゃんと間に合ったかなと呟くハボックにエドワードは苦笑する。
「あれじゃあ何のことか判んねぇって」
「そうかぁ?でも、言えなかった部分は心ん中で補完したから」
 だから大丈夫と笑ってハボックは尋ねた。
「大将は?願い事しなくてよかったのか?」
「はっ、星に願い事なんてガキのする事だろ?」
「悪かったな、ガキで」
 エドワードが肩を竦めて答えればハボックがムゥと唇を尖らせる。どうせオレはガキですよ、と不貞腐れて窓から身を乗り出すようにしてそっぽを向く横顔を、エドワードは目を細めて見つめた。
(ホントは心ん中で叫んだけどな)
────ずっと一緒にいたい。
 ちょっぴり長い文章も口にしなければ流れ星が消える前にちゃんと三回言えた気がする。
(つか、言ったし。ちゃんと叶えろよな)
 言えたということに自分で決めつけて、エドワードは流れ星にそう心の中で念押した。そのまま暫く黙ったまま空を見上げていれば、ハボックが吐き出した煙が夜空に上っていく。暗い空に白い煙が上がっていく様が星の川のようだとエドワードが思った時、ハボックが言った。
「ずっと一緒にこうやって星を眺めような。五年経っても十年経ってもずっとさ」
 ハボックはそう言いながら星を見上げる。楽しそうに笑みを浮かべる横顔を食い入るように見つめていたエドワードは、くしゃりと顔を歪めた。
(こんなだから星に願い事する必要がなくなんだよ)
 星になど縋らなくてもエドワードの願いなど、いとも簡単にハボックは叶えてしまう。込み上がってくる愛しさのままにハボックを見つめていれば、星を見上げていた空色がエドワードを見た。
「大将?」
 呼んでも答えないエドワードにハボックが不思議そうに首を傾げる。
「どうかした?腹でも痛いのか?」
「……痛いのは胸だよ」
「えっ?」
 ハボックが好きで好きで好過ぎて胸が痛い。
「胸がって、大丈ぶ────うわっ?」
 心配して伸ばした手を引き寄せられてハボックが声を上げる。見開く空色を引き寄せて、エドワードは噛みつくように口づけた。
「大しょ──んんッ!!」
 突然の事に驚いてもがくハボックをきつく抱き締めて口づけを繰り返せば、徐々に腕の中の体から力が抜けていく。
「エド……」
 甘く鼻を鳴らすハボックを抱き締めて、エドワードは星空の下何度も何度も口づけた。


2012/07/07