俺様な皇帝と恥ずかしがり屋の騎士の話6


「えっ?帰った?」
「ああ、ついさっきな」
 コーヒーを載せたトレイを手に執務室に入ってきたハボックは、ロイがそう言うのを聞いて目を瞠る。ロイの机にカップの一つを置けば、書類から目を上げてカップを手にしたロイが続けた。
「セントラルの大尉から電話があって、仕事がたまってるんだからとっとと帰ってこいと怒鳴られてたよ」
「そう……っスか」
 どこの副官も怖いなぁと嘆くロイをそのままにハボックは執務室を出る。トレイの上に残ったカップを見つめて、ため息をついた。
「なんだよ、帰るなら帰るって言ってけっての。無駄にコーヒー淹れちゃったじゃん」
 ハボックはそう呟いて司令室の大部屋を出る。給湯室まで行くと飲んでくれる人のないカップの中身を空けようとして手を止めた。
「……ちぇっ」
 がっかりと肩を落としてハボックは捨てようとしたコーヒーを啜る。ハアとため息をついて壁に寄りかかった。
「大体いつも勝手なんだよ、人のこと振り回してばっかで」
 今回だって突然やってきたと思えば散々に自分のことを乱した挙げ句挨拶もなしに帰ってしまった。ハボックはキュッと唇を噛むと残ったコーヒーを捨てて給湯室を出ていった。


 仕事を終えてハボックはアパートに戻ってくる。リビングの灯りをつけると手にしたサンドイッチの袋をテーブルの上に放り投げた。
「あーあ」
 ドサリとソファーに腰を下ろしハボックはだらしなくへたり込む。深くため息をついてアパートの天井を見上げた。
 狭いはずのアパートが何故だかやけに広く感じられる。ずるずるとソファーに沈み込むともう一度ため息をついた。
「なんだよ」
 あんな風に笑うからてっきり今日はアパートに来るのだと思っていた。それなのに。
「……中佐の馬鹿」
 ハボックはため息をついて目を閉じる。暫くそのまま座り込んでいたハボックだったが、やがてそろそろとボトムに手を伸ばした。前を弛めそっと己を取り出すと色の薄い楔を握り締めゆっくりと扱き出した。
「ん……ふ……」
 ハボックの唇から熱い吐息が零れ、切なげに眉が寄せられる。徐々に楔を扱く手の動きが速まり、零れる吐息が温度を上げた。
「はぁ……ッ、んふ……」
 先走りを塗り込めるように扱けばクチュクチュとイヤラシイ水音が部屋に広がっていく。
「あふ……中佐ァ……」
 首を仰け反らせハボックが瞼の裏に浮かぶ姿を呼んだ時。
 ジリリンッ!!
「ッッ!!」
 突然電話のベルが鳴り響き、ハボックはギョッとして目を見開く。驚きのあまりハアハアと息を弾ませて、ハボックは鳴り響く電話を見た。そのまま放っておこうとも思ったが万一急な呼び出しだと拙い。ハボックはそろそろとソファーの端に躙り寄ると楔を握り締める手と反対の手を電話に伸ばした。
「……もしもし」
 なるべく息を整えてからそう言う。司令部の誰かだろうかと待つハボックの耳に飛び込んできたのは、たった今頭に浮かんでいた男のものだった。
『よお』
「中佐っ?ア、アンタねぇ、帰るなら帰るって一言……ッ」
 思わず咄嗟にそう怒鳴れば受話器の向こうで笑う気配がする。今朝聞いたばかりの筈なのにやけに懐かしい気がする声に、ハボックは切なげに息を吐いた。
『どうしたよ、俺が帰っちまって淋しかったか?』
「ッ、そ、そんなわけねぇっしょ!」
『とか言って、それじゃあお前の手の中にあるのはなんだよ』
 そう言われてハボックはギクリとする。
「な……何のことっスか?オレ今サンドイッチ食って────」
『オカズにしてんのはサンドイッチじゃなくて俺じゃねぇのか?』
「ッッ!!」
 見えるはずもないのにズバリと言い当てられてハボックが絶句する。そうすればクスクスと笑う気配がして、ヒューズの声が聞こえた。
『やっぱりな。あんな話した後だし、絶対その気になってんだろうって帰るの凄く心残りだったんだが、大尉が煩くってなぁ。悪かったな、かわいがってやれなくて』
「なっなに言って……ッ」
『ああ、固くなって、だらしなく涎垂らしてんじゃねぇか。ほら、聞いててやるから扱いてみな──ジャン』
「ッ!」
 耳元に吹き込まれるクスクスと笑う低い声にハボックは目を瞠る。ハアハアと浅い呼吸を繰り返していたが、やがてゆっくりと手を動かし始めた。
「ん……んふ……」
『ふふ……イヤラシイ音がきこえるぜ?クチュクチュって……。そんなに気持ちイイのか?』
 囁かれる声にハボックは小さく頷く。促すように『ジャン?』と呼ばれて口を開いた。
「気持ち……イイっス……」
『そうか……今お前の、どんなになってる?教えてくれよ』
「どんなって……」
『いっぱい涎垂らしてんのか?』
 そんな風に言われて、ハボックは恥ずかしそうに首を振る。ハアハアと息を弾ませて蜜を塗すように楔を扱けば、ヒューズの声が聞こえた。
『ジャン、後ろは?どうなってる?』
「うしろ……?」
『そんなイヤラシイ声出して、イヤラシイ音立てて……後ろ、ヒクついてんじゃねぇか?ん?』
「後ろ、は……」
 ハボックは呟くように言って楔を扱いていた手を双丘の狭間に差し入れる。そっと指を伸ばして奥まった箇所に触れると、垂れてきた先走りに濡れてヒクヒクと戦慄く蕾にハボックは一際熱い吐息を吐いた。
「あ……ふ……」
『……指、挿れてみろ、ジャン』
「指……?」
 やわやわと蕾を撫でながらハボックが呟く。そうすれば受話器からヒューズの囁き声が聞こえた。
『そうだ……大丈夫、ちょっと力を入れたらいい。いつも俺がしてやってるだろう?ほら……挿れてみろ、ジャン』
「…………」
 囁く声にハボックはほんの少し躊躇ってからクッと指に力を入れる。そうすれば指先が蕾の中にめり込んで、ハボックは息を弾ませた。
『そうだ、そのまま……ゆっくりと中に挿れるんだ、ゆっくり、ゆっくり……』
「はあッ……んっ、ふ……ぁっ」
 囁く声に導かれるように、ハボックは蕾に埋めた指先をゆっくりと押し込んでいく。
「んっ、んっ」
『上手だ、そのままグーッと根元まで……入ったか?』
「はあ……ッ、は、入った……」
 気がつけば中指が根元まで埋まっている。それを聞いたヒューズが低い声で言った。
『じゃあ今度はその指を動かしてみろ。掻き回すように……ゆっくり……広げて……』
「はあ……ふぁ……っ、中、さ……ッ」
『中佐じゃねぇ……マースだ、ジャン、呼んでみろ……もっと気持ちよくなるぜ……?』
 低く囁かれる声にハボックはゾクリと震える。グチュグチュと指を掻き回していたが、やがて口を開いて言った。
「マース……」
『ジャン……』
「あ……ッ」
 呼べば答えるように声が返ってきて、ハボックはビクリと震える。それと同時に掻き混ぜる蕾が指をキュンと締め付けて、ハボックは切なげにため息をついた。
『ジャン……指、増やしてみな?一本じゃ足りねぇだろ?俺のは、もっと太いだろ?ん?』
「ん……足りない……」
 囁く声に頷いてハボックは指を二本、三本と増やしていく。そうすればハボックの唇から零れる声が甘さを帯び、そそり立った楔から更に密を零した。
「ふあ……マース……ッ」
『凄いな、ぐちょぐちょだぜ?ほら、掻き回してみな。お前ん中のイイトコがあるだろう?突いてやろうか?俺のデカイので、ゴリゴリされると気持ちイイよなぁ……?』
 ハボックはハアハアと息を弾ませ、埋めた指を激しく出し入れする。いつもヒューズが楔で突いてくれる箇所を指先で押し潰せば、背筋を突き抜ける快感に甘く悲鳴を上げた。
「アアッ!!……ああん、マースぅッ!」
『可愛いぜ、ジャン……ほら、ゴリゴリしてやる、ここだろう……?』
 低く囁く声にハボックは指先で前立腺をグリグリと押す。大きく開いた股間を突き上げるようにして一際強く押し潰せば、ハボックの唇から嬌声が迸った。
「ヒャアアアアッッ!!」
 それと同時にそそり立った楔からビュクビュクと白濁が噴き出す。背を仰け反らしてビクビクと震えたハボックが、がっくりとソファーにその身を沈めれば、受話器から低い笑い声が聞こえた。
『いっぱい出たな……可愛いぜ、ジャン』
「中佐ァ……」
『今度はお前ん中にたっぷり出してやる……ほら、もう一度指で掻き混ぜてみな?ジャン……』
「あ……ああ……」
 クスクスと笑い混じりに囁かれる低い声に操られるまま、ハボックは無我夢中で指を動かし続けた。


2012/06/25