変化19〜忍者


「機密はあの金庫の中だ。ハボック、出番だぞ」
「アイ・サー」
 潜んだ物陰でロイが囁けばハボックが答える。ハボックは傍らのブレダを見て言った。
「オレの体、頼む」
「任せろ」
 頷くブレダに頷き返して、ハボックは印を組むと金庫のすぐ側に立つ見張りを見つめる。
「心転身の術!」
 そうハボックの唇が言葉を発するのと同時に突然ガクリとハボックの体が頽(くずお)れた。
「おっと」
 側に立っていたブレダがハボックの長身を抱き抱えるようにして支える。その時、立っていた見張りの体が大きく震えたと思うと、ロイ達が隠れている方を見てニヤリと笑った。
「大佐」
「上手くいったか」
 見張りの言葉を聞いて、ロイ達が物陰から姿を現す。見張りの体を乗っ取ったハボックは、腰の鍵束から金庫の鍵を選んで鍵穴に差し込んだ。カチリと音がして鍵が開く。ハボックは中から巻物を取り出し、ロイに差し出した。
「大佐、これっスね」
 ロイは巻物を受け取ると紐を解き中をざっと確かめる。ロイが頷くのを見て、ハボックは金庫の扉を閉めると鍵をかけた。
「よし、機密を手に入れたらもうこんなところに用はない。行くぞ」
「「アイ・サー!」」
 ロイの言葉に頷いた見張りの瞳から光が失せ、その体が床に倒れる。それと同時にブレダに支えられたハボックが目を開けてニッと笑った。
「行くぞ!」
 ロイの言葉にハボックとブレダが走り出す。三人と一緒に走る黒い塊を見下ろしてハボックが言った。
「帰ったら旨いメシ食わせてやるからな、ブラハ」
「ワン!」
 答えるブラハに笑みを浮かべてハボックはロイ達と一緒に走る。下のフロアへの階段を駆け下りた三人は丁度小部屋から出てきた男とはち合わせてしまった。
「な……ッ?!敵だッ!!潜入者だッッ!!」
「チッ…火遁!豪火球の術っ!!」
 大声で叫ぶ敵の忍者に舌打ちして、ロイは手袋をはめた指を擦り合わせる。そうすれば等身大の火の玉が膨れ上がって敵の忍者をひと呑みにした。
「ぐわああッッ!!」
 真っ赤な焔に包まれて敵の体がドウと倒れる。急を知らせる忍者の声でわらわらと現れた忍者達に、ブレダは顔を顰めた。
「いっぱい出て来ちまいましたよ」
「仕方ない、強行突破だ」
 ロイがそう言えばブレダとハボックが頷く。三人と一匹は襲いかかってくる敵に向かって足を止めることなく突っ込んでいった。
「火遁!豪龍火の術っ!!」
 叫んで擦り合わせたロイの指先から何匹もの焔の龍が現れ敵の中を飛び回る。焔の龍の餌食になって、次々と敵が倒れた。
「部分倍化の術っ!!」
 その声と同時にブレダの右手が十倍に膨れ上がり、ブレダは巨大化した手で敵を張り飛ばす。暴れる二人を見て、ハボックはブラハを見下ろして言った。
「オレ達も行くぞ、ブラハ!」
「ワンっ!」
 答えて毛を逆立てるブラハに頷いてハボックは行く手を塞ぐ敵を睨む。
「獣人分身っ!!」
ハボックが叫んだかと思うと、ハボックとブラハの体がユラリと揺らいでハボックがブラハに、ブラハがハボックにと姿を変えた。
「いくぞ、ブラハ!牙通牙っ!!」
 ハボックの声と同時に一人と一匹が地面を蹴る。そのまま絡み合うように体を高速回転させ、敵の中に突っ込んでいった。
「グハッ!!」
「ウワアッ!!」
 回転して飛び回る体に敵が次々と弾き飛ばされる。ハボック達の体が元に戻ったときには、近くにいた敵は粗方倒されていた。
「行くぞっ、急げっ!!」
 怒鳴って走り出すロイに続いてハボック達も建物の中を走り抜けていく。現れる敵をなぎ倒して進んではいくものの、次々と現れるそれにロイがうんざりして言った。
「キリがないな、火遁・灰積焼でも使うか?」
「うわー、巻き込まれたくないんで勘弁してください〜」
 威力は凄いがタイミングを誤れば味方や術者までも巻き込まれかねない大業を口にするロイに、ブレダとハボックが泣きを入れる。
「じゃあどうするんだ、チマチマ倒していたんじゃいつまでたっても終わらん」
 気の短いロイが言えばハボックが答えた。
「判りました、んじゃ、アレいきます!」
「おい」
 ハボックの言葉にブレダがいやそうな顔をする。だが、それに構わず目を閉じて印を組んだハボックは、カッと目を見開くと同時に叫んだ。
「ハーレムの術っ!!」
 その声と同時にボボボンッとそこら中に金髪に空色の瞳でボンキュッボンの全裸の女の子達が現れる。投げキッスをしたりセクシーポーズを決める彼女達に敵が気を取られている間に、三人と一匹はその場を逃げ出し建物の外へと飛び出した。
「アレ見ると悲しくなる……」
「なんでっ?」
 走りながらそう呟くブレダにハボックがムッとする。そのハボックをチラリと見るとブレダはため息をついて言った。
「だってよー、お前の女の子版に男共がクラクラするなんて、間違ってるだろ?」
「煩いなぁ、だったらオレとブレダで男の子どうしの術するか?」
「それだけは絶対ヤメロ」
 見たくもない姿を想像してブレダがぞぞぞと震えた。
「くだらん事を言う暇があったらさっさと走れ!」
「はあい」
「遅くなったら撃たれますもんね」
 ロイの言葉にハボックとブレダが首を竦める。無事機密を手に入れた三人は五代目火影・リザが待つ里へ、一直線に駆けていったのだった。


2010/09/28


お題19で「忍者」です。前に「海賊」でアレをパロったので「忍者」は絶対これだろうと(笑)ロイが火遁、ブレダが倍化の術を使うのはすぐに浮かんだんですが、ハボになにをさせようかと思わず忍術を調べちゃいましたよ(笑)おいろけの術は使いたいと思っていたのですが、おお、牙通牙あるじゃん!とブラハも同行してもらいました。どうせならロイとハボで「おいろけ・男の子どうしの術」を使いたかったなぁ。影真似の術でハボに悪戯とかvv…って、すいません、相変わらず腐ってて(苦笑)