| 変化12〜中華服 |
| シーズンものの服を入れ替えようとクローゼットの奥にしまってある、普段あまり弄らない箱を引っ張りだしたハボックは、その箱の一番下に隠すようにしまってあったきらびやかな服に気づく。もしやと思って引っ張り出せば、それは綺麗な青の地に金糸銀糸で牡丹の花が刺繍された豪華なチャイナドレスだった。 「……とってあったのか」 ご丁寧にクリーニングに出した上でしまってあるその服のろくでもない思い出が頭に浮かんで、ハボックは思い切り顔を顰める。こんなものをとっておいた日にはどうなるか判ったものじゃないと、ハボックは箱の中からドレスを出した。 「ホントに何考えてるんだろ、あの人……」 ハボックは取り出したドレスを前に呟く。きちんと畳んであったそれを広げれば、鮮やかな青に金糸銀糸で刺繍された大輪の牡丹が浮かび上がってそれはそれは見事だった。 『色もサイズもデザインも、お前にあわせて私が全部選んだんだ』 そう言ってドレスをまとった自分を嬉しそうに見つめていたロイの言葉が思い出される。その表情にも言葉にもロイのハボックへの想いが溢れていて、それは嬉しく思いこそすれ決して不快なものではなかった。 「これで普通のチャイナ服なら素直に喜べるのに」 どうしてここでドレスになるのか、その辺のズレを何とかして欲しいと思うものの、そのズレすら赦してしまうのだから自分がどれほどロイを好きか、ハボックは自覚せざるを得なかった。 「たいさ……」 手にしたチャイナドレスに鼻先を埋め、愛しい相手の名を呟く。暫くそうしてドレスを抱き締めていたが、ちょっと迷って服を脱ぎ捨てドレスを身にまとった。 「すげ……ほんとピッタリ」 オーダーメイドで作ったというドレスはハボックの長身にピッタリで余計な弛みがない。きちんと寸法を計ってさえここまで出来るか疑問であるのに、ロイは“毎日触っている”というその感覚だけでオーダーしたというのだから凄いとしか言いようがなかった。 「そんだけオレって大佐に……」 ロイの記憶に寸分違わずそのサイズが残るほど触れられているのかと思うと急に恥ずかしくなってくる。肌に触れるヒヤリとしたドレスの感触がロイの手のひらの感触のように思えて、身を震わせたハボックが慌ててドレスを脱ごうとした時。 「なんだ、嫌がってたと思ったが、実は着たくてたまらなかったんだな」 面白がるように言う声が聞こえてハボックはギョッとして顔を上げる。そうすればロイが扉に寄りかかるようにしてハボックを見ていた。 「いやっ、これは別に着たいとかじゃなくてッッ!!」 ハボックは声を張り上げて言い訳しながら慌ててドレスを脱ごうとする。だが、ロイはハボックに服を脱ぐ隙を与えず、二歩でハボックに近づくとドレスに包まれた腰をグイと引き寄せた。 「誤魔化さなくていい。悪かったな、気づいてやれなくて」 「だから違うって言って…ッ!」 必死に言い募るハボックの顎を掬ってロイは噛みつくように口づける。 「んっ、んんっ!」 「お望み通り今日はドレスを着たまま、思う存分可愛がってやるからな、ハボック……」 「た…いさっ」 耳元に囁く低い声と共にスリットから忍び込んできたヒヤリとした手のひらに、ハボックは抗う事も逃げ出すことも出来ずに身を震わせたのだった。 2010/09/21 |
| お題12「中華服」です。お題はなるべくカプなしでいきたいと思ってるのですが、すみません、今回はロイハボで〜(笑)二年以上前に書いた「着せかえその後」の二人です。なんだかんだ言ってロイに感化されてるハボックってことで(笑) |