8.ドキドキする?


「……へへ」
「なにを笑ってるんだ、お前は」
 啄むようなキスを交わせば嬉しそうに笑うハボックにロイは眉を顰める。そうすればハボックがロイをギュッと抱き締めて言った。
「やっと会えたなぁって」
「……悪かったな、遅くなって」
「ううん、会えたからいいっス」
 ハボックは言って頭半分低いロイの黒髪に頬をすり付ける。その頬の冷たさにロイは眉間の皺を深めた。
「お前、冷えきってる……私のせいだな」
「ん……大丈夫っス。こうやって熱貰ってるから」
 いつもなら自分より体温の高いハボックの体がこんなに冷えきってしまっていることに、ロイの罪悪感が強くなる。せめてと回した腕に力を込めればハボックがまたクスクスと笑った。
「なんだ、笑ってばっかりだな」
「うん。だって嬉しいっスから」
 そう素直に口にするハボックにロイの心臓がトクンと跳ねる。そうすればハボックがロイの肩に顔を埋めて言った。
「あ、大佐の心臓、早くなった」
「そうか?」
「うん、ねぇ、大佐。オレにドキドキする?」
「……そうだな、久しぶりだし」
 ちょっと考えてからそう答えればハボックがプッと吹き出す。
「それって久しぶりじゃなかったらドキドキしてくんないみたいじゃねぇっスか?」
「じゃあ忙しくて会えなくて正解だったな」
「……大佐」
 あんまり嬉しそうなハボックにちょっと意地悪したくなってロイがそう言えば、途端にハボックが眉を下げる。ご主人様に放っておかれた犬のようなショボクレた表情にロイはクスリと笑って言った。
「嘘だ。私もお前に会いたくて仕方なかった」
 素直に言って伸ばした手でハボックの頬を撫でれば空色の瞳が見開かれる。瞼が降りてその空色を隠すのと同時にロイにチュッと口づけて、ハボックはロイの口の中に言葉を吹き込んだ。
「オレ、もっとドキドキしたいっス」
「……ああ、私もだ」
 望んだ言葉が唇に囁き返されてハボックは嬉しそうに笑う。
「冷えてきた。私の熱だけじゃもう足りんな───行こう」
「はい」
 差し出した手を互いに握り締めて、二人はロイの家へと歩いていった。


2010/12/02