10. 痕


 テーブルを乗り越えて飛びついてきたその勢いのまま噛みつくように口づけられて、ロイは激しいキスにくらくらと目眩がする。『待っていられないだろうから急いで出てきてやった』と言いはしたけれど、一刻も早くハボックに触れたいのはロイも同じだった。それでもわざと平気な顔をしてココアなど飲んで見せたのは単なる意地か。組んだ脚の付け根で下着をつけていない楔が、既にいきり立って蜜を垂れ流しているのを、気づかれやしないかとそればかりが気になって仕方なかった。
「ん……ふ……たいさ…っ」
 ハボックがキスの合間に呼ぶ掠れた声にゾクゾクと背筋が震える。この声も少し苦いキスも本当に久しぶりだった。
「たいさ……」
 長く激しいキスを終えてハボックがごく間近から見つめてくる。空色の瞳が情欲に濡れているのを見れば、嬉しくて堪らずロイはうっすらと笑みを浮かべた。
「随分がっついてるな」
 自分だって同じようなものなのを隠して、ロイはからかうように言う。そうすればハボックが顔を赤らめてロイを睨んだ。
「どんだけぶりだと思ってんスか」
 ハボックは言ってロイの耳朶を軽く噛む。
「アンタはオレの事、欲しくねぇの……?」
 低い声でそう囁かれて、思わずロイの体が跳ね上がる。その反応にハボックがクスリと笑った。
「欲しいんだ?」
「……私はそんなにがっついてない」
 思わぬ体の反応が悔しくてそう答えればハボックが耳元でクスクスと笑う。ムッとして厚い胸板を押しやるロイをハボックは嬉しそうに見つめた。
「ねぇ、欲しいって言って?」
 掠れた声でハボックが甘く囁く。その声に体の奥底がずくりと震えてロイはギュッと目を閉じた。
「たいさ……?」
「……知らん」
 真っ赤な顔で微かに震えていう姿が、全身でハボックを欲しいと言っている。それにも関わらず言葉を口にしようとしないロイに、ハボックはうっそりと笑った。
「ホントに?オレの事欲しくない?」
 意地悪く繰り返し聞いてくるハボックをロイは目を開けて睨む。熱に潤んだ黒曜石にハボックはうっとりと笑って、腕を伸ばしてロイの体を引き寄せた。
「好き……好き、大佐……」
 囁いて甘いキスを降らされればいつまでも不機嫌を装ってはいられない。ロイはハボックの体を抱き寄せてキスに答えた。
「好き、だ……私も…」
 そう囁けばキスが優しい笑みをまとう。何度も何度もキスを交わすうち、先に焦れたのはロイの方だった。
「キスはもういい」
「じゃあなにして欲しいんスか?」
 グイと肩を押しやられたハボックが楽しそうに尋ねる。そんなハボックをロイはジロリと睨んで、ハボックの太い首に唇を寄せた。
「ッ?!…ッテェ!」
 首筋に走った痛みにロイの肩を掴んで引き剥がす。ニヤリと笑ったロイの唇が薄紅く染まっているのを見て、噛みつかれたのだと気づいた。
「……この、性悪猫」
「お前が悪いんだろう?」
 フンと鼻を鳴らして言うロイを軽く睨んでハボックは首筋を指先でそっと辿る。指先にうっすらとついた血に、ハボックは顔を顰めた。
「もうっ、歯形なんて……こんな痕、どう説明すりゃいいんスか」
 これではシャワーを浴びる時どころか、上着を脱いだら見えてしまう。冬でもTシャツ一枚になることが多い身としては、皆にからかわれること必至だった。
「猫に噛まれたとでも言えばいいだろう?」
 性悪猫と呼ばれた事を根に持ってロイが言う。ソファーの上で乱れたバスローブからしどけなく肩や胸元を覗かせ、細い脚の根元まで晒して、情欲に濡れた黒曜石に挑戦的な光を宿して見つめてくるロイに、ハボックの中心が熱を集めてドクリと嵩を増した。
「……それじゃあアンタには犬の噛み痕をいっぱいつけてあげましょうね?」
「……え?…アッ、ハボっ?!」
 言うなり伸びてきた腕にソファーの上に押し倒されてロイが短い悲鳴を上げる。ハボックはバスローブの襟に手をかけて左右に開くと、現れた白い肌にきつく唇を押し当てた。
「アッ!や、あ…ッ!」
 チクンと痛みが走って、白い肌に紅色の花びらが散る。一瞬離れた唇が押し当てられる度、軽い痛みと共に花びらが一枚、また一枚と散っていった。
「んっ、あ……ッ、くぅ…ッ!」
 散った花びらから快感が全身に広がっていく。白い肌を桜色に染めてビクビクと震えるロイを、ハボックはうっとりと見下ろした。
「たいさ……」
 囁いて細い脚を持ち上げると透き通るほど白い内股にきつく口づける。
「アッ!くぅ、ンッッ!!」
 唇を離せば今までの中で一番色鮮やかな紅い痕が、くっきりと白い肌に浮かんでいた。
「ハボック……っ」
 熱く呼ぶ声にロイの顔へ視線を向けると濡れた黒い瞳がハボックを見つめている。乱れたバスローブの隙間から覗く張りつめた楔にハボックが指を絡めれば、ロイが熱いため息を零してそっと目を閉じた。
「たいさ……」
 ハボックは指を絡めた楔に唇を寄せ、愛しそうに口づける。とろとろと零れる蜜を舌先で舐め取りチュッチュッと口づけながら、ハボックは奥まった双丘の狭間へと指を滑らせた。
「クゥッ!!」
 零れる蜜の助けを借りて指先を蕾に潜り込ませれば、ロイが背を仰け反らせて喘ぐ。ハボックは楔に降らせるキスを止めずにクチュクチュと蕾を掻き回した。
「んっ……あっ、はん……ッ」
 好き勝手に掻き回す指にロイの体がビクビクと震え、零れる蜜が増す。ハボックは存分に解れたと見ると指を抜き、ロイの脚を抱えなおした。
「たいさ」
 興奮に掠れた声で呼べば濡れた黒い瞳が見上げてくる。伸びてきた細い腕に引き寄せられるように、ハボックは滾る自身で戦慄く蕾を押し開いていった。
「ア……アアアッッ!!」
 狭い器官を強引に割り開き押し入ってくる熱い塊に、ロイが高い悲鳴を上げる。一気に根元までねじ込んだ楔で、ハボックは熱く熟れた内壁をぐちゅぐちゅと掻き回した。
「ヒャウッ!アアッ!!ああんっっ!!」
 絡みついてくる熱い感触が堪らない。ハボックはロイの脚を抱え込み煽られるままに激しく突き入れた。
「アアッ!!ヤアアアッッ!!」
「たいさっ…ッ、たいさ…ッッ!!」
 きつく穿たれて、快楽とも苦痛ともつかぬものにロイがかき抱いた背に爪を立てる。ピリとした痛みさえもハボックを煽って、ハボックはガツンとロイの最奥を抉った。
「───ッッ!!」
 ビクビクッと大きく体を震わせてロイが熱を迸らせる。キュウウと締め付ける蕾に、ハボックは眉を寄せロイを追うように熱い内壁に熱を叩きつけた。
「う…ッ、くぅ…、大、さッ!」
 ハボックは呻くようにロイを呼んで荒々しく口づける。弾む息を奪われてロイは苦しげにもがいた。
「んっ……んふ……」
 苦しい息に合わせるように蕾がきゅうきゅうと締まる。そうすれば熱を吐き出したはずの牡が体の奥底でムクムクと頭をもたげるのを感じて、ロイは苦しげにハボックを見上げた。
「ハボック……」
「も……全然足りねぇ…ッ、大佐っ、もっと欲し……ッッ」
 そう言ってギュッと逞しい腕に抱き締められてロイはうっとりと笑った。
「私も……もっと欲しい…私の中にも外にも…お前の痕をもっともっと刻んでくれ……」
 熱く囁く声にハボックの頭にカアッと血が上る。
「大佐ッ、たいさァ…ッ!!」
 求められるまま、ハボックはロイを強く抱き締めると熱い想いをロイの中に刻みつけていった。


2010/12/05


ロイハボ版だけ書いてアップしたらありがたくも「ハボロイ版も読みたい」というお言葉を頂き、嬉しくなって書いてみました(笑)頑張ってエロくしてみましたが如何でしょう。お楽しみ頂けたら嬉しいですv