10.痕


「は……ふぁ……」
 ハボックはロイの頭を抱き抱えるようにして深く口づける。きつく舌を絡め口内を舐め回して唾液を混ぜれば、二人の唇の端から含みきれない唾液が銀色の糸になって落ちた。
「たいさ……」
 掠れた声でロイを呼んで黒髪を胸に抱き締める。ホゥとため息を漏らすハボックにロイはクスリと笑った。
「どうした?もう終わりか?」
 漸く『よし』を貰って飛びついてきたと思えば、キスだけでそれ以上しようとしないハボックにロイは尋ねる。そうすればハボックがロイの髪を抱く手にキュッと力を込めて言った。
「アンタって強烈……」
「ハボック?」
 ため息混じりにそんな事を言われてロイは先を促すように名を呼ぶ。ハボックはロイの髪を指に絡めては解いて遊んでいたが、少ししてから答えた。
「オレ…アンタに触れなくて顔もまともに見らんなくて……すぐそこにいんのに、アンタの匂いがあっちこっちにすんのに……欲しくて、でもダメで、すんごいカラカラになって……」
「……うん」
「やっとこうやって触れて嬉しいのに……キスだけでアンタ強烈過ぎて……なにしていいのか判んない……」
「───お、お前…っ」
 何を言うのかと聞いてやっていれば、まるでセックスしたことがないような子供のような事を言い出すハボックにロイはプッと吹き出す。クックックッとおかしそうに身を震わせるロイをハボックは顔を赤らめて睨んだが、黒髪に絡ませていた手をロイの頬に添えて言った。
「大佐……顔、よく見せて」
 そう言われてロイは何とか笑いを引っ込めてハボックを見つめる。うっすらと笑みを浮かべる端正な顔を見つめて、ハボックはうっとりと言った。
「そうだった……こういう顔だった」
「なんだ、顔を忘れてたというんじゃないだろうな」
「そうじゃねぇけど」
 呆れたようなロイの声にハボックは答える。ロイの顔を両手で包み込んだままチュッと口づけて言った。
「こうやってちゃんと見るの久しぶりだなぁって」
 言って顔中にキスを降らせるハボックにロイはくすぐったそうに笑う。暫く好きにさせていたが、ハボックの名を呼んでやめさせると言った。
「ハボック、こっち」
 ロイはそう言って頬に添えられていたハボックの手を取る。バスローブの中で既に高々とそそり立っていた自身を握らせると自分はハボックのそれをそっと包み込んだ。互いの楔をすり寄せるようにしてもう一方の手で包み込み扱き出せばハボックも同じように扱き始める。チュッチュッとキスを交わすうちに手の動きもスピードを増し、絡む吐息も熱を増して言った。
「たいさ……たいさ…っ」
「ハボック……っ」
 ピチャピチャと舌を絡めグチュグチュと楔を扱く。嵩を増す楔から零れる先走りの蜜が互いの手を濡らし、興奮を煽った。
「アッ、んあっ!た、いさっ、も…イくっ」
「ああ……一緒に…っ、ハボックっ」
 そう囁きあって手の動きを早める。引き合うように深く口づけた直後、ほぼ同時に二人の熱が弾けた。
「んんっ、ん───ッッ!!」
「んんんッッ!!」
 互いに喰らい合うように深く唇を合わせ胸を擦り寄せる。迸った白濁が二人の腹を濡らし、もったりと肌を伝って流れた。
「ハアッ……ハッ、ハッ……」
「……ッ、……は…」
 息を弾ませながら互いに見つめ合う。そうすれば自然と笑みが零れて二人はクスクスと笑った。
「大佐……好き」
「ああ……私もだ」
 うっとりと囁くハボックにロイは答えてハボックの胸に唇を寄せる。心臓のすぐそばにチクリとした痛みが走って、ロイの黒髪を押しやったハボックはそこに刻まれた紅い花びらを見つけて目を見開いた。
「あ……大佐」
 顔を赤らめて睨んでくるハボックにロイはニヤリと笑う。つけたばかりの痕を指でさすりながら言った。
「こうして痕をつけておけば私の顔を忘れそうになった時に思い出すきっかけになるだろう?」
「だからー、忘れた訳じゃねぇってば」
 ハボックは唇を尖らせてそう言うとそのままその唇をロイの胸に寄せる。チュッときつく吸いついて同じように花びらを残した。
「私はお前の顔を忘れたりしないぞ」
「これは虫よけ。これからパーティが目白押しっしょ?」
 ハボックはニィと笑って言う。ロイが苦虫を噛み潰したような顔をすればハボックは楽しそうに笑った。
「……まったく」
 そんなハボックにロイは金髪を悔しそうに引っ張る。引っ張った金髪でハボックを引き寄せて唇が触れ合わん距離で囁いた。
「こんな痕よりもっと強烈な痕を残したいと思わないか……?」
 言って笑うロイの色っぽさにハボックもドキドキしながら笑う。
「うん……たいさ……」
 うっとりと囁いて唇を合わせて、二人はどちらともなくソファーに倒れ込むと深く強く互いを求め合った。


2010/12/04